Unbirthday

 

「んー、やっぱここ最近は出てないっぽいなー」
「そっか、やっぱり置いてる所ないのかなぁ…」
リビングのソファで商人系情報誌を見ながら言う史乃に後ろからそれを見ていた琉風がしょんぼりと俯いた。
「どした琉風、探し物か?」
「はい、水属性ソードメイスが欲しいんですけど中々見当たらなくて」
彩の差し出すオレンジティーを受け取り琉風が答えるとあれ?と何かを思い出したような声を出しながら史乃が座っている隣に腰掛ける。
「北広場の方に属性武器専門露店あっただろ、あそこ行ってみたか?」
「はい、聞いてみたんですけど最近は作ってないって言われちゃって」
「もしかしたら倉庫の肥しにしてる奴いるかもしれねーし明日露店出した時にでも回りに聞いてみるわー」
「ありがとう史乃、俺も地道に探してみるね」
「水ソードメイス今日俺見たかもしれない」
「本当?どこで!?」
それを言った台所のテーブルで紅茶を飲んでいる呂揮にものすごい勢いで食いつく。
「確か東門にいるカプラさんからちょっと南に入った通りかな、でもホームに帰る直前に見た店だから今もやってるかちょっと怪しいけど」
呂揮がホームに戻ってから時間はかなり経過しており、そういうのも無理はない。
それでもよっぽど欲しかったのか一気飲みして空になったグラスを流しに置き、玄関のドアを開ける。
「俺これからちょっとそこ見てきます!」
「行ってもいいけど琉風!通りすがりの人に声かけられてもホイホイついていったらだめだからな!」
「はい、いってきます!!」
「はー…よっぽど欲しかったのかねー」
「この間行ったスフィンクスダンジョン行ってから欲しくなったみたいだよ。あとカードの夢もあるしね」
琉風が飛び出していったドアを見ながら史乃がぽかーんとした顔で手の情報誌を
くるくる巻いていると、酒の肴にテーブルに置いていたマルスの燻製に手を伸ばした呂揮が答える。
「なるほどなー」
それから呂揮は彩が台所で洗い物を始めたのを見計らい今度は小声で囁いた。
「それよりもさ、琉風一人で大丈夫かな」
「んー?某Hiwizギルドは少し前にギルドブレイクしてから静かなモンだっていうしその辺の心配はないんじゃねーの?」
「違うってば、東門の左手ってほら」
呂揮がさらに声を潜めた事で史乃はすぐに思い出したのか納得した表情で何度も頷いた。
「あー、はいはいあそこだろー?一見ただの飲み屋街、蓋開けりゃ今宵のSEX相手を探す場所、だっけかー」
「うん。時間的にそろそろ賑わい始める頃だから琉風変なのにひっかかったりしないかなって」
「あそこの奴らは素人相手に強引な商売とかやらねーし客層もその辺り分かってから平気だろー」
「なんか随分詳しいね史乃」
「んーまぁ通ってた時期あってー…っつか昔だぞ昔、彩マスに会ってからは行ってねーぞ、断じて!」
必死に否定してくる史乃に分かった分かったというように両手のひらを目の前に出す。
「弟扱いからっていうどん底スタートからの成就だもん。そんな史乃が浮気なんてある訳ないよねっていうかもう彩マスしか見えてないもんね」
「くっそー微塵も否定できねーし」
照れ隠しに酒を煽る史乃に小さく微笑むが、呂揮はすぐに心配そうに琉風が出て行ったドアの方を見る。
「それにしても琉風本当に大丈夫かな」
「そんな心配しなくても大丈夫だろー?露店があった場所が呂揮の言った場所なら結構離れてるしなー」
「でもさ、琉風って本当『そういうの』分かってない所あるだろ。そっちに向かう人とかに
 偶然声かけられて会話全然かみ合ってない事に気づかないままどんどん誘導されちゃいましたとかになりそうでさ」

* * *

「よぉ、おにーちゃんっ」
「…?……こんばんは」
親しげに肩に手を置き話しかけてきたが琉風はそのアルケミストとは全く面識は無い。
「ここいらを歩いてるってことは…今日は誰かと約束?それとも探しに?」
話しかけてきた相手が商人系であるアルケミストだったので琉風はすぐに商売関係の取引相手の事だと思い首を振った。
「あ、探してはいるんですけど約束している訳じゃないんです」
「そっかそっか。まぁがんばれ、いいの見つかるといいな!」
激励するようにばんばん肩を叩かれるが琉風の方はしょぼんと肩を落とす。
「この辺りにいるって聞いて来たんですけどタイミングが悪かったみたいで会えませんでした。すごく残念ですけど今日はあきらめて帰ります」
「は?」
それからアルケミストは琉風の顔から足先まで視線をめぐらせたあとがしぃっと腕を掴む。
「おいおいそんな見目してあきらめんの早すぎだろ!お前ならいい相手なんていくらでも見つかる!大丈夫だ!!」
「え?え?え??」
「ほらこっちこいこっち、俺がよく行く店とか結構いいぞ〜」
「あの…えっと…えぇぇぇ?」
困惑する琉風に構わずアルケミストは琉風を東門の左手にある裏通りの方へと半ば強引に引っ張って行った。
(あれ、なんだかすごく明るい)
琉風が連れて行かれた場所は記憶の中では日中いつも扉が閉め切られていた所だ。
だが辺りが暗くなった今はそこかしこに明かりが灯っており、決して大きな通りではないがそれなりに賑わっている。
「ここ座ったほらほら」
「…はい…」
琉風が案内されたのは1軒の酒場。
客の何人かが明らかに自分を見ている視線に戸惑いながらもカウンターの椅子に腰掛けた。
色即是空・空即是色の攻城戦後の打ち上げでよく利用する料理と酒両方を振舞うフェイヨンの店とは違い、
ここは純粋に酒のみを提供する店のようだ。
「いやーここで本当なら俺でよかったらーになるんだけどさ、生憎約束入っちまってんだよ。
 もう念願のって奴?まぁお前なら絶対大丈夫だから!!!」
「はい。ありがとうございます…」
おどおどしている琉風に力説し、鼻歌など歌いながらアルケミストが店を出て行ってしまった。
「いらっしゃい、ご注文は?」
「あ、えっと…」
「俺と同じの作ってあげて」
「!」
店のマスターであろう人から尋ねられしどろもどろになっている琉風の背後から声がして、振り向きざま見えた鎧に一瞬身を固くする。
だが、よくよく見るとそのロードナイトには全く見覚えはなかった。
「あの…?」
「俺のおごり、美味しいよコレ」
そう言いながら琉風のすぐ横に座ったロードナイトが手にしたグラスを揺らしてみせる。
「でも、そういう訳には!」
「別に高いモンじゃないんだから遠慮しないの、はい乾杯♪」
「…すみませんいただきます」
マスターから受け取ったグラスにこちんとぶつけて煽ったのを見て、せっかくの好意を無にするのもと遠慮がちではあったが一口飲んだ。
「これ、すごく美味しいですね」
柑橘系の香りがするその酒はアルコールがそれほど得意ではない琉風でも飲みやすく、
素直に感想を述べるとロードナイトもでしょ。と嬉しそうに笑っている。
「ねえそれさ」
グラスを傾けながら琉風の袖口のエンブレムをちょんと指で触れてきた。
「色即是空の琉風だよね。同盟ギルドの空即是色専属傭兵をやってる」
「え?どうして俺の名前…」
「実は俺のギルドも攻城戦ギルドなんだ、こないだ明亭に攻めたんだけど覚えてないかな」
「もしかしてジプシーさんがマスターの所ですか?」
先週の攻城戦で明亭の防衛を次々打ち崩し攻め込んできた一つのギルド。
最終的には退けたものの一時はエンペリウムを攻撃され、ヒヤリとさせられたのもまだ記憶に新しい。
ロードナイトの鎧についていたエンブレムは正にそのギルドがつけていたものだった。
「そうそう、ウチの女王が君の事未転生のクセになにあの阿修羅の威力キィィィとか言ってたよ」
「ご…ごめんなさい!」
「女王のヒステリーなんていつもの事だから気にしないで。未転生で転生職にそんな事言わせちゃうって逆にすごい事なんだからさ」
「ありがとうございます」
「で、今日はここにいるって事は相手を探しにきたのかな?」
さっきのアルケミストと同様『相手』という言い回ししてくる事を不思議に思ったが、
 この辺りで取引するための専門用語みたいなものだろうと琉風は一人で納得した。
「はい、実は探してる人がいて。結局は見つけられなかったんですけど」
「ありゃ、じゃあ俺話しかけちゃって迷惑だったかな」
「いえ、そんな事ないです!」
バツ悪そうにしていたロードナイトだったが、真っ先に否定した琉風にうれしそうに笑う。
「なら良かった。元々琉風って特定のギルドメンバーとしか『仲良く』しないみたいな感じのこと聞いたからさ、そういってくれると嬉しいよ」
「俺もこうやって他のギルドの人と仲良く出来るのうれしいです!」



『琉風、琉風』
『……呂揮?wisなんて珍しいね、どうかした?』

ふと届いたwisにロードナイトと会話を続けながらも呂揮へとwisを合わせる。

『水ソドメ売ってた露店って結局見つかったの?』
『呂揮のいう場所に行ってみたんだけどもうお店しめちゃったみたいで見つからなかったんだ』
『なら早く帰って来なよ、あんまり遅いと彩マス心配するぞ』
『うん、そうなんだけどなんか売ってくれる人見つかるよって案内された所あるんだ』
『もしかして琉風が今いる場所って東門からちょっと裏はいった所にある飲み屋とかじゃない?』
『えっなんで知ってる?詳しい場所までぴったり当たってる!』
『やっぱり…』
『え?何がやっぱりなの?』
『うぅんいいよこっちの話。そこで誰かに話しかけられたりとかした?』
『うん。GVギルド所属の人に声かけられた。いま俺の隣にいるよ』
『その相手にどこか別の場所に移動しようとか言われたりしてないよね』
『今言われた所だよ。俺と話してるのすごく楽しいからここよりゆっくり話せる場所に行かないかって』
『……………………………琉風』
『何?』
『絶対にそいつの言う事聞いてついて行ったら駄目だよ、今すぐホーム戻ってきて』
『ギルドマスターが心配するしこれで帰るって言ったんだけどすごく哀しそうにするんだ。このまま帰るの申し訳なくて』
『じゃあ俺が今から迎えに行くよ、その人にちゃんと説明するから』
『え?一人ででもちゃんと帰れるよ。ただもうちょっとだけ話して…』
『すぐに迎えに行くからそこに居て。誰に何を言われても絶対そこから動いちゃだめだからね』
『う…うん、分かった』

有無を言わさない呂揮の強い口調に琉風はそう答えるしかなかった。

* * *

「呂揮様?」
聞き覚えのある声に呼び止められ呂揮が足を止めると紫罹がホワイトスミスからゼニーの袋を受け取っている所だった。
「山茶花様、代売まことにありがとうございました」
「どういたしまして。代わりと言っちゃなんだけどまたあたしの露店見に来てよ」
「是非お伺いさせて頂きます」

『カートブースト!!』

ホワイトスミスの姿が小さくなるまでふかぶかとお辞儀した後、ノピティギの応用なのかふわりと飛び上がり、
軽やかな動きで呂揮の目の前で着地した。
「呂揮様、ご機嫌麗しゅう」
「こんばんは紫罹。プロにいるなんて珍しいね」
「はい、本日は白ハーブ採取と狩りを少々。四季奈様が本日ご不在ですので今収集品の代売をしていただいた所です」
「そっか今日は莉良とらこさん3人で時計だっけ」
「お三方の重量が限界になるまで滞在されるとの事です。本日はお2人とも明亭に宿泊致しますと彩様にお伝え下さい」
「うん分かった、それじゃ俺ちょっと行くとこあるから」
「呂揮様、一体どちらへ行かれるのですか?」
呂揮を呼び止める紫罹の口調はあくまで柔らかだったがその表情からは想像出来ないほど動きに隙がない。
まるで呂揮を行かせまいとするかのようだ。
「あ、うんこの近くまでちょっとね」
「殿方同士の出会いの場と言われております東門近くの裏通りですか?」
「えっ!?」
場所が場所だけに紫罹の発した言葉には流石の呂揮も動揺の色を隠せない。
「澪様をお慕いしている呂揮様があのような場所に用など一切無い筈です………今度は一体何方からのお呼び出しございますか?」
「呼び出し?……………あっ」
そこでやっと紫罹の言わんとしていることに気がついた。

呂揮は以前所属していたギルドのメンバーから何度となく脅迫された経験がある。
内容はお決まりと言っていいほど元ギルドマスターと隷属的関係であった時の事を
周囲にばらされたくなかったら言うとおりにしろとというものだった。
最初はゼニーから始まり、甘んじてそれに従ったのが逆に相手を調子に乗らせてしまったらしい。
最終的に要求するものが色即是空・空即是色所有のギルド資産、そして呂揮の身体に至るまでに時間はかからなかった。
過去の羞恥など出来るなら晒されたくはない。でもそのために今のギルドを、
そして恋人の澪を裏切るつもりなど微塵もなかった呂揮は意を決し全てを打ち明けた。
『話してくれて有難う。もう心配はいらないよ』
怖いくらい綺麗な笑みで言った澪の言葉通り、その件は恐ろしい勢いで収束した。
最もそれを知ったのは『すぐに俺に話さなかった罰だよ』と3日3晩澪の部屋で散々愛された後の事だったが。

ただそれ以降というもの脅されることは全く無くなり呂揮自身もやっと過去のしがらみから
解放されたのだと思っていたのだが、紫罹は恐らくその事を示唆しているらしい。
自分が脅迫され、今から行こうとしている場所に呼び出されたのだろうと。
「誤解だって紫罹、前みたいな脅迫されてるとかじゃないってば!あんま大きな声では言えないんだけど実は…」
「大きな声では言えないけど・なんだ?」
「!!!!!!」
かけられた声と共に紫罹の背後に立った人影に呂揮は思わず後方に退いていた。
「り………リィさん」
「お待たせして大変申し訳ありませんでした。こちらがリィ様の分でございます」
「ん」
紫罹がゼニーの入った袋を理へ渡しながらもじりじり後ろへさがろうとする呂揮の腰のファーをしっかり握り逃げる事を許さない。
「リィさんもしかして今まで紫罹と一緒だったんですか?」
完全に離れるタイミングを失ってしまった呂揮はそう尋ねながらもどこか困ったような表情でやけにそわそわしている。
「あぁ・紫罹が白ハブ群生地見つけたって言うからスティール要因でな」
「そうなんですか…」
「っつかお前はココで何してんだ・彩マスが風呂で通信切れてる間にホーム抜け出してきた悪漢呂揮サン?」
ここに居る経過を既に理が把握している事が分かると、うぅーと唸りながら額に手を当てる。
「もぉ史乃の馬鹿っすぐ戻るから内緒って言ったのに!」
理がちょいと人差し指を動かし『話せ』と促すと、観念したように今までのいきさつを説明した。
「で、琉風は誘われてんの全く気づかねえままオシャベリ中ってことか」
「あの場所は比較的安全とは聞いてるんですけど何しろ琉風ですから何かやらかすんじゃないかって
 心配で…すぐに戻りますから彩マスには上手く誤魔化しておいて下さい」
行こうとした呂揮の肩に手を置き理がやんわりとそれを止める。
「オレが行く」
「それはだめですリィさん!そっちの方に行かせたのは俺の責任ですし俺が行きます」
「琉風が勝手にソッチに行っただけで別に呂揮のせいじゃねえだろ」
「でも…」
「確かにあの場所は比較的安全な場所かもしれねえけどあの人に――――澪マスに心配させる要因はゼロじゃねえんだぞ」
「………………」
食い下がっていた呂揮も澪の名前を出されると弱いのか途端に黙ってうつむいてしまう。
「リィ様のおっしゃる通りです、ご自分の容姿を御自覚なさいませ。この辺りは特に御自覚なさいませ」
「ゆ、紫罹…それはすごく俺のこと心配してくれてるって思うことにするよ、うん」
紫罹に臀部辺りを手で示され、呂揮はさりげなく手で隠した。
「お前は紫罹を明亭まで送れ・いいな」
「…分かりました、よろしくお願いしますリィさん」
「それと呂揮・今明亭に澪マス戻ってるぞ」
「澪マスがですか?確か今はヴァルキリーレルムの方で交渉中の筈ですよ」
「その交渉が早くにケリついたらしいな・紫罹送るついでに『ゴアイサツ』でもしてきたらいぃんじゃねえの」
「か…からかわないでください!」
顔を真っ赤にしながらもどこか嬉しそうにしている呂揮の背中を軽く叩き、理はその先にある路地裏へと消えていった。

* * *

「やっぱり駄目?」
「え?」
「オレンジ好きだって言ってたでしょ。俺がさっき話した店のオレンジシャーベットすごく美味しいんだ。ちょっと行ってみない?」
「えっと…………」
何処か別の場所へ移動しようと言う事を匂わせる言動はかれこれ4回目になる。
呂揮からwisで『絶対今の場所から動くな』と念を押されていたため断り続けていたが、
断る度に哀しそうな顔をするので流石に申し訳ない気持ちになってきた。

(呂揮にはあとでwisで場所知らせればいいかな)

「じゃあちょっとだけなら」
「本当?じゃあ早速行こうか……………?……」
手を差し伸べたロードナイトの手を遮るように割って入ってきたのは見覚えのある背中。
最初はいきなり割って入った事に不愉快そうな表情をしていたロードナイトだったが、理の顔を見ると同時にため息をついた。
「はいはい分かったよ。君が相手なら諦めるしかないものね」
肩をすくめ、あとちょっとだったのになぁと呟きながら席を立つ。
「お迎えが来たみたいだしシャーベットはまた今度にしようか。気が向いたら俺とも『遊んで』よ琉風」
「はい、こちらこそ是非お願いします!」
ふかぶかとお辞儀する琉風にくすくす笑いながらロードナイトはその場を離れていった。
「呂揮が迎えに来るって聞いてたんだけどどうして理がここに来たの?」
店を出て歩きながら問いかけると理は軽く顎をしゃくった。
「その辺見てれば今に分かる」
「え?この周りを見てればいいの?」
理にそう言われ琉風は素直に周囲の観察を始めた。
「宿と飲み屋さんが多いね、でもそれくらいしか……………!!!」
ある一点を見た途端琉風は顔を真っ赤にして不自然に顔を逸らした。
琉風が見ていた先にはハイプリーストとアサシンの2人。
若干身を屈めたハイプリーストの腰にアサシンは腕を回し、ハイプリーストの手はアサシンの腰、というよりも明らかに臀部を揉んでいる。
「もぉ…だめだってばぁ…ん…」
言葉ばかりで咎めながらも這い回る手をやめさせようとはせずにアサシンはハイプリーストの顔中にキスを落としている。
それが繰り広げられているのは琉風達が今正に通ろうとしている道の脇で嫌でも視界に入ってくる場所だった。
アサシンは背中を向けていたため顔は見えないが、ハイプリーストの方は琉風も知っている人物だ。
「不壊・だな」
蘇利耶がマスターとして治めるギルド、九曜のサブマスター・不壊。
一時期九曜に所属していた理や呂揮とは違い短い会話を交わした程度の琉風には言うほど面識はない。
とは言え知っている人のこのような場面を見るのは背徳感が否めず何より恥ずかしかった。
「理待って!」
琉風が立ち止まっていると理は構わずそちらの方向に歩き出したので慌てて服の裾を掴んで止めた。
「俺ポタ出すからそれで帰ろう」
「あ?お前モロクにポタメモするってホーム前上書きしたろ」
「大丈夫、プロンテラでセーブしてるからそこから……ンッ…!」
ポケットからブルージェムストーンを取り出す琉風の身体を理が抱き寄せるといきなり唇を塞いでくる。
「…ン…んぅっんんん……!」
突然のキスに離れようとするが、腰に手を回されさらに深く口付けられた。
「ン…ン…!…んぁ……だめだよこんなところで…!」
理の舌が咥内に入ってくると軽く握った拳でぺちぺちと理の肩を叩いてキスを拒むが、理は腕は琉風を離そうとはしなかった。
「どうせこういう目的で来てる奴らばっかりなんだ・誰も別に驚かねえよ」
「なに…この場所って…」
「お前がさっきまで居た飲み屋・SEXの相手を誘うトコだぞ」
「なっ!!」
想像もしていなかった理の答えに、顔を見ずとも自分の顔が真っ赤になっていくのが分かった。
「勿論お前の側にいた奴も最終的には琉風にこういうことスるつもりだったんだろ」
こういうこと。と言いながらそろりと臀部撫で、否定するように琉風は首を振る。
「違うよ!あの人とは普通に話してただけで…」
「違わねえよ・いきつく答えは同じだ。最終的にはお前のこと裸にひん剥いてケツ穴にブチ込むつもりだったんだろ」
「そんな恥ずかしい事……やぁっ待って理…やだっ…んっ…」
今度は両手で臀部を掴まれぐにぐに揉まれ、思わず声が出そうになってしまう。
「待ってよ理…こんな所でやだぁっ」
「別に誰も気にとめねえよ」
「……!……やっ理っ…あぁっやぁぁっ」
琉風のズボンのベルトに手をかけてきたのに気づきそれを止めようとすると服の間に手を差し入れられ乳首をつまみあげられた。
「あ…ぁ…お願いまって……やぁっ…!」
身体を撫で回す理をなんとかやめさせようとしている僅かな隙に器用に片足だけズボンと下着を引き抜かれてしまう。
「やぁぁやめてやめてこんなのやだぁっ!…………ンゥ!?」
仮にも人通りのある外でこんな格好にされてしまった恥ずかしさで思わず叫んでしまった
琉風の口は理の大きな手で塞がれ、そのまま建物と建物の間へと引きずりこまれていった。
「大声出せよ・こんな格好でここに居るって誰かに気づかれてぇならな」
「……っ………」
手から口を離されても琉風は言葉を発しない。
こんな格好を誰かに見られたくは無かった。
黙っている琉風の片足を抱え側にあった木箱の上に引っ掛ける。
着ている服で通りからは見えないものの、足を広げられて下半身を晒す恥ずかしい格好にふるふると首を振った。
「やだやだ理何するのっ」
「お前の好きなコトだろ」
「やンッ…ン…」
理の指が唇に押し当てられそのまましゃぶらされる。
いっぱいしゃぶらされたその指でどうされるのか――――。
「まって今は…………あぅんっ」
たっぷりと唾液で濡らした理の指が秘部に当たると自分でも驚くくらい鼻にかかった声を出してしまう。
「はぁ…はぁん…ぁ…あ…ン…」
そのまま上下に擦ると唾液で湿った指がくちゅくちゅ音を立て始め琉風の息遣いは次第に荒くなる。
「はぁっあうぅぅぅんッ……………ン…ぅ…」
秘部を摺る動きが速くなったと思ったらいきなり雄を握りこまれ、さっきよりも大きな声を出してしまう。
「ンッ………あぁっあ…あァァッ」
誰かに聞かれてしまうとあわてて口をつぐむも、既に立ち上がっていた雄を扱かれると声を抑える事が出来なくなっていた。
「指・入れて欲しいなら言え」
「やだ………!」
小さく拒みの言葉を発して首を振る琉風にへぇ、と言いながら指で強めに秘部を圧迫する。
「あぁぅんっ」
「ヒクヒクさせてぐじゅぐじゅにシて欲しそうにしてんのに違うのか」
入り口を擦る指がもっともっとナカへ入っていくように思わず腰を揺らしそうになるが、僅かに残る理性でそれをおさえ込んだ。
背後の理が笑ったような気配を感じ、せめて声だけは出さないようにと軽く唇を噛む。
「まぁお前・コレだけでもイケるしな」
「………!!!…やぁっやぁぁっやぁぁぁぁぁっっ」
もう少し力を入れればナカに入ってしまうくらいの強さで指を秘部に押し付けられたまま擦られ、あれだけ出すまいと思った声は簡単に零れる。
雄を握った指が動く事は無かったが、人差し指で時折先端を引っかかれるとその度に雫を垂らした。
「やめてお願いやめてぇっもぉ…あぁぁもぉソコはぁっ」
僅か数歩の所で人がいきかっているというのに。
全身に快楽を教え込んだ男の指と、秘部から微かに漏れ聞こえるくちゅくちゅという音に一気に琉風は追い上げられていく。
「…くっ…ぅ…ン…………もぉイくっあうっあうぅぅぅぅんっ」
どんなに我慢しようとしても漏れてしまういやらしい声。
「あぁんもうだめ出ちゃうよぉっあぁっあっあっアァァァ…………!!!」
全身をぴくんぴくん震わせながら琉風は壁に向かって勢いよく精を吐き出していた。
「あ…ぁ………ことわり………わぁっ!?」
息を整える間もなく突然抱き上げられ、晒されたままの下半身を上着で隠しながら歩き出した理を見上げる。
「待ってよ理…おろしておろしてっ」

「そうだぞ強引なのは関心しねぇな」

足をじたばたさせていた所に聞こえてくる声。
「え…ぁ………うっ…うわーーーーー!!!!!」
離れていた場所にいた筈の不壊がすぐ側に立っていたのを見た瞬間琉風は周囲が注目するほどの大声を上げていた。
「なんだ琉風化け物でも見たような驚き方だな。ブリトニアで会ったことあるだろ」
「ご…ごめんなさい不壊さんそんなつもりじゃないんです!その…えっと…」
顔はやはり見えないが不壊のすぐ後ろにアサシンがいるのが分かる。
しかもべったりとくっついているらしく不壊が話している間も手を伸ばして唇を
指先でなぞったり法衣の中に手を入れて鎖骨を撫で回したりしているのだ。
琉風の方はしきりに目を泳がせているが、不壊は後ろから身体を撫で回すアサシンの手を気にすることなく話を続けている。
「っつか2人揃って何してんだ、むしろお前らこんな場所に用なんてないだろ」
「ねぇよ・オレがここに来たのは琉風のオムカエだ」
「ん?今琉風って言った?…………あっ。おぉぉおおおおおぉぉぉおおおお!!!!!!」
不壊に抱きついていたアサシンが不壊の後ろから顔を見せ、理と抱き上げられている琉風を見た途端大声を上げた。
「お前うるせえし」
「うぷぅぅぅごめんごめん、会ってみたいなーって組み合わせに会えて感動しちゃってさ」
ぐしゃぐしゃと髪の毛をかき回してくる不壊から逃れるように離れると、アサシンは未だ抱き上げられたままの琉風へと近づいていく。
「こんばんは琉風、ねえねえ俺の事覚えてる?」
琉風がおそるおそるというように自分を指差しながらにこにこしているアサシンを見た。
以前に『俺の友達』と呂揮から紹介されたアサシンだ。名前は確か―――――。
「新月…だよね?」
「あったりー♪嬉しい、琉風とはまた会いたいなーって思ってたんだ」
「う………うん」
今会っている場所が『SEXの相手を誘う場所』ということと、不壊との『あの』場面を
見てしまった後ろめたさもありそれ以上何もいえなくなってしまう。
琉風の態度に不思議そうに首をかしげていたがやがて新月はあ、と何かに気づいたような声を出した。
「琉風もしかして足怪我してる?」
「え?別に足は……」
「最近のモンスター場所によっては手ごわいの多いしね。さしずめカプラ近道するために
 ここ通ってきたってとこじゃない?近いからって何もこんなとこ通らなくたっていいのにね〜びっくりしたでしょ琉風」
「あの…これは…………」
どう返したらいいか分からず琉風が口ごもっている間も新月の方は『足を怪我して動けなくなった
琉風を理が抱いて薬を取るためにカプラ倉庫へ向かう近道のためにここを通過している』という前提で話を進めているようだ。
「おい、お前それどう見たって…………………いっ!!!!!!」
何か言おうとした不壊の足を新月が力いっぱい踏みつける事でそれを遮る。
「急いでるのに引き止めちゃってごめんね琉風、それじゃまたね〜ばいば〜い♪」
「あ…うん、またね」
ひらひらと手を振るとそのまま痛みで俯く不壊をぐいぐい引っ張っていった。

「……………おい新月てんめぇ」
かなり距離を置いた後、低く言い放つ不壊を宥めるように頬へキスした。
「ごめんごめん。痛くなるようなふんずけかたしちゃったもんね」
「大体白々しいにも程があんだろ。何が『足がケガしてるの?』だ、どうせ建物間のスキマとかで一発ヤって続き宿でなとこだろ明らかに」
「うぅんあの様子は違う、建物の隙間辺りで人に見つかるかもってハラハラさせられながら
 イタズラめいた事されてイかされて、ココにある宿は全部ヤるためのモノなんだぜぐっへっへ、
 いやぁそんなえっちなところいきたくないよぉとかそーいうやりとりしながら連れて行かれる途中って感じだった」
「ぐっへっへはとにかくその他もろもろは具体的かつ的を射すぎだろそれ」
「そりゃこういうのお仕事にしてる人間ですから。琉風は一生懸命隠してたけど明らかにぱんつ履いてなかったしね」
「そこまで分かってて俺の足力いっぱい踏んでまで黙らせた言い訳を詳しく」
「こういう場所に居る事すごく恥ずかしいって感じてたみたいだったから知らないフリした方が
 いいと思ったの。変なギスギス感残して後々避けられるのも嫌だしさ。知ってるでしょ?俺がアコ系大好きなの」
不機嫌そうな顔を隠そうともしない不壊の頬をむしろ楽しそうに笑いながらつぅ、となで上げる。
「まぁまぁ、そんなに怒んないでよ♪痛くしちゃった分ちゃーんとサービスするから」
「それはそれはお仕事熱心なことで」
「ふふ…攻城戦やってるギルドの人間って『こーいう仕事』してる俺らにとって上客だから手放したくないもん。それにさ」
思わせぶりに不壊の股間辺りをさわ、と撫でた手をそのまま腰に巻きつけ妖艶を含ませた視線を寄越す。
「いい男を独占するのって気分いーじゃん」
「…その二枚舌で、一体何人のオトコたぶらかしてきたんだ」
「あれー自覚なし?いいよ、今からたっぷり自覚させてあげるからさ」
咥内に差し込まれてくる不壊の指を隠微な動きで舐めあげながら新月は笑った。

* * *

「はぁ…ア………あァァァァァァァッッ!!!」
絶頂へと追い上げられた身体をびくびく震わせ、四つんばいになっていた琉風はベッドに突っ伏した。
「はぁ…はぁ…ゆび…ぬいて…もぉかえる…あぁっ」
ベッドから這い出て床に散った服を拾おうとした琉風の身体は理によって軽々引きずり戻されてしまう。
「……………!!…ひゃァ…あんっあァっアァッ」
身体に回された手がそのまま琉風の平らな胸を揉むようにしては乳首をつまみ上げ、
片方の手は秘部へと潜り込み、琉風が達した今もなお蠢き続けていた。
「やんっ…はなして理…もうホームに帰ろうよ……あッ……あぁんそれだめぇもぉそれはやめてぇぇっ」
泣きながら哀願する琉風に構わず秘部の指を3本に増やし乱暴に根元へねじ込んでいく。
「ホーム帰るとか・勃たせたまま帰る気か」
「あはっあんっあはァっはぁぁんっあぁぁぁッッ」
硬く立ち上がる琉風の雄を軽く握りこみ、人差し指で一番感じる雄の先端をいじくり回される。
「あはっあはぁぁぁぁんっっ!」
もっともっといじってほしいという衝動を無理やり押さえ込み、我慢しようとすれば雄と秘部の指を同時に動かされその度琉風の腰が左右に揺れる。
「もう一度イかせてやるからケツもっと突き出せ」
「やぁっやぁぁんっやは…ぁ…あぁぁぁっやァァァァァァァッッ!」
腰を持ち上げられる感覚と同時に秘部に入っていた指が奥の気持ちのいい場所を擦るように動き出し、シーツにすがりながら逃げようとする。

ぐちぐち、ぐちゃぐちょっぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ。

「あんっアァァァァァっっだめまたっ……やぁぁぁぁぐちゃぐちゃしたらまたイっちゃうよぉっ」
指は執拗にそれを追い、逃げた罰だと言わんばかりに音を立ててかき回され、再びくる絶頂感に抗えず琉風は鳴き続ける。
「イケ・このグチャグチャ聞きながらイクのスキだろ」
「いわないでそんなこといわないでぇぇッ!」
「スキなんだろこの音が」

ぐじゅぐじゅぐちゃぐちょぐちゅぐちゅぐちゅっ。

「だめぇイクっイっちゃうもぉイっちゃうあはァァァァァァァッ!!」
秘部から聞こえてくるいやらしい音を聞きながら、琉風はシーツへぱたぱたと精を吐き出した。


『今からホーム戻るとかヤボな事すんな』


理がそう言った意味は分からなかったが琉風はとにかくこの場所から一刻も早く離れたかった。
この場所一帯はSEXの相手を探すための場所であり、そこにある宿といえばその相手とSEXするためのもの。
自分がこの場所に居続ける事で自分がSEXを望んでいると周囲に思われるのが恥ずかしかったのだ。
SEXに対する抵抗感は無くなってきても羞恥心だけは今も消えることはない。
帰りたいと言う琉風の意向はあっさり却下されそのまま理に『SEXするための宿』へと連れて行かれてしまった。
抵抗する間もなく大きなベッドの上で裸にさせられ、そして今味わわされたのは既に何度目かになる絶頂だった。
「あんっ!」
ぐちゅりと奥の奥まで入れられた指を勢いよく引き抜かれ、どこか物足りなさを感じた自分を恥じつつも起き上がった。
「……こ…理帰ろう……ねえ…………あっ…やだやだもぉやだよぉぉっ」
足を大きく左右に広げるように仰向けでベッドへと倒され、明かりが煌々としたままの部屋で晒される自らの痴態に恥ずかしさで涙を浮かべる。
「ヒクついてんな」
「やァァァァみないでみないで!恥ずかしいよ理もぉ見ないでぇぇッ!」
帰りたいと口で言いながら物欲しげにヒクつかせる秘部を見られたくなくて泣き叫ぶも、がっちりと足を抱え込んだまま理は足の間に顔を近づけていく。
「ここに琉風が一番欲しいモノ・まだぶち込まれてねぇしな」
「あぁっあっあっちがっちがうのこれはっあんっ」
いくら口先で違うと言っても理が舌先を使って秘部をちろちろと舐めれば、もっと欲しいと訴えるように断続的にそこを蠢かせる。
「何が違うだ・このカッコでスケベな事されてぇクセに嘘吐きやがって」

じゅばぁっじゅるっじゅるるじゅるじゅるっ。

「アァァァァァァァァァーーーーーッ!」
そのまま顔を埋めると秘部を啜りあげられ、琉風の口から悲鳴じみた嬌声が零れる。
明るい部屋のせいで嫌と言うほどはっきり見えてしまう理の舌使い。
なんとか理を退かそうと手を伸ばすと、一層激しい音を立てて秘部を啜られた。

じゅばじゅばじゅばじゅばっじゅるるっじゅるぅぅっ。

「やだよぉっソコもぉじゅるじゅるしないであっあぁんっあはァァァッ」
「何がシないでだ・ケツ穴啜られただけでイキそうになってるスケベ男が」
啜る振動に、その音に、しゃべる唇の動きですら興奮している事に気づかれたくなくてもがいても、
離してもらうどころか一層足を大きく広げられてしまう。

じゅるるるるっじゅばっじゅばっじゅばじゅばっ。

「あはァっあぁっもぉだめもぉイっちゃぅぅッッあっ舌だめぇ舌なかに入れないでやぁぁそんな中までぇぇッッ!」
遂には秘部の中にまで理の舌が進入し、内部までもを舐められる。
ダメと叫びながらも触れられていない筈の琉風の雄は次から次へとたれ落ちる雫は止まらない。
「やぁぁイクのやぁっもぉイクのやだよぉやぁぁぁ舐めないでじゅるじゅるやめてぇぇぇぇッ!!」
またイかされるのは嫌とどんなに思っても、湧き上がる興奮をもう抑える事が出来なかった。
「やぁぁっやァァァァっあっあっアァァァァァァーーーーーッッッ!!」
最後には泣き叫びながら琉風は精を吐き出した。
「はぁんっあっ……………やはぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」
達した余韻すら味わう間もなく襲う激しい悦。
「あ、あぁっ、あぁぁぁぁぁぁ」
理の雄で秘部を貫かれていたのだと、内側から押し広げてくる熱さで理解する。
「………やっあぁぁっはァァァッッ」
今の状況をやっと理解したと思えばまた次から次へと快楽を与えられ続け思考がついていかない。
「ことわりお願いまって………やァァそこだめそこだめぇぇっ!気持ちいいの止まらなくなっちゃうよぉっ」
琉風がどんなに嫌がって見せても奥の気持ちのいい場所はどんどん強く突かれ、気持ちよくなる事を拒絶するように首を振った。
「なれよ・今この場所でな」
「…!!!…やッ…あァ………やぁぁぁぁやはぁっやぁぁんっあんあんあぁぁぁぁぁんっあうぅぅぅぅんっ」

『この場所』

SEXするための宿にいる事を意識させられ何か言おうとした琉風の口から出たのは意味をなさないただの嬌声だった。
早くここから出たい、帰りたいと思うのにその意思に反して身体は理が与えるものを悦んでいる。
「そこはだめっ…そこはだめやめてぇっあぁぁぁソコはぁぁぁッ」
理の雄が琉風がしきりに嫌がる気持ちのいい場所に届くとゆっくりとした動きで圧迫し、
それに従順に反応した琉風の雄からとろりと雫がたれ落ちる。
「あぁぁっあぁぁっあぁっ」
ぐ、ぐ。と鈍い圧迫を繰り返した後与えられたのは、正に蹂躙とも言えるような快楽攻めだった。
「アァァァッアァァッアァァッアァァァァァァーーーーッッ!!!!」
秘部の奥にある琉風の気持ちのいい場所めがけて雄を突き入れられ上がった声は歓喜のそれ。
指で、舌で何度もイかされ敏感になった秘部はさも嬉しそうに理の雄を根本まで飲み込む。
「あうっあうっあうぅっあうあうあうぅぅぅぅッッ」
無意識のうちに巻きついてきた理の指に雄を押し付けながら琉風はいっぱい気持ちのいい場所に当たるように腰を動かし始めていた。
「あぁぁっまたイっちゃうイくッあぁぁぁイクぅぅぅぅっっあぁっあっン………ンぅ…ッ……!」
理が覆いかぶさり唇を重ねてくると同時、身体の奥に叩きつけるように流し込まれる理の精。
「ン…ん…んんッ……ン…!…ンン…」
理が達した事に煽られるように琉風もまた精を吐き出し腹部を濡らした。
「あふ…あん、あ…は、ンぅ…」
思考さえも止まるような快楽攻めが漸く止み、唾液の糸を引かせながら理の唇が離れていく。
そのまま理にぴったりと寄り添いながら息を荒らげていると、琉風の耳に理の唇が押し当てられた。
「まだホームに帰りたいとか抜かすか?」
「はぁぁんっ」
入ったままの理の雄が気持ちのいい場所に緩く当たり思わず漏れる声。
「あ…ことわり…んぁ…ン…」
止まってしまった動きがじれったいとばかりに琉風の腰は中に入ったままの理の雄をもっともっと奥へと誘うように蠢かせていた。
「好きなだけ腰振れよ・スケベ男にはこの程度じゃイき足りねえだろうからな」
「あ…あン……あッ…あぁっ」
言われてももう腰の動きを止めることは出来ない。
顔を赤らめながら身体を揺すって小さく鳴いていると琉風の頬に理の大きな手が触れた。

「お前の全部・オレが満たしてやる」

低く囁く理の声に全身がぞくりとわななく。
「ぜ…ぜんぶ…?」
か細い声でそういいながら手を伸ばしてくる琉風の手を取り、自分の頬に当てた後そっと手に平に口付ける。
「あぁ・そうだ」
琉風がその時感じたのは羞恥よりも期待と悦びだった。
「し…して…もっと」
小さくだが自分で足を広げて強請る琉風に反し、理は逆に腰を引いて雄を引き抜き始めた。
「…!…あ…ぬいちゃ…あっアァァァァァッッ!!!」
構わず引き抜いてしまうと、代わりに指をねじ込み乱暴な動きで中に放った精をかき出し始める。

ぐぷぐぷぐぷっぐちゃぐちゃぐちょっ。

「ひぁぁッあっひんっはぁぁッあはァァァァァァァッッ!」
音を立てて指を動かすたびに秘部から精があふれ出てシーツに伝い落ちていく。
雄で激しくイかされ余韻も引かない内にこうやって秘部を指でグチャグチャにかき回される。
精を吐き出してもなおイク波が何度も何度も訪れるそれは、琉風の身体から忘れられない快楽となっていた。
「最近お前『コレ』好きだろ」
「…あ………」
指の動きが一度止み、聞かれた言葉はまるで琉風の心を見透かしているようで思わず顔をそらしてしまう。
「好きなんだろ?」
「……………」
頬を優しく撫でられながらもう一度問われると恥ずかしそうにだが琉風は頷いてしまう。

ぐちゃぐちゃぐちょぐちゃぐぶぶぶぐちゃぁっ。

頬をぺろりと舐められたと同時に再び動き出す秘部に入れられた指。
「あうぅぅっイっちゃうっあぁぁぁイきまくっちゃうあはぁぁぁぁぁぁぁんっっ!」
「イけ」
理が短くそう言えば指の動きが更に速く小刻みになり、散々雄で突きまくられ敏感になった琉風の秘部を苛む。
「あはぁぁんあんあんあはぁぁっひあぁっアァァァァァァーーーッッ!!」
あまりの激しさに腰を突き出すようにして浮かせ、鳴き喚きながら琉風はイき続けた。
「あァァッ!………あう…あァっあ、あん」
指が引き抜かれ、琉風の腰がぺしゃりとベッドに落ちる。
荒い息を繰り返していると潤んだライトグリーンの瞳で理を見上げた。
「欲しい…まだいっぱい…理…あんっ」
秘部を理の雄でぬるんと撫でられ琉風の腰がそれに期待するかのように揺れる。
「本当は恥ずかしいの…今でも『コレ』はすごく恥ずかしい…でも理に『コレ』されると欲しいのも気持ちいいのも止まらない」
「……………」
「もしさっきの飲み屋さんにいたロードナイトさんが本当に俺に『コレ』をしたくて声かけて
 きたっていうなら…俺したくない。どんなにいやらしいこと言われても、
 恥ずかしいこといっぱいされても『コレ』は理だけにされたい…あぁっはぁ…ン…」
話している間もぬるぬると雄の先端が琉風の秘部を撫で続け、琉風の息が乱れ始める。
「だから理にいっぱい満たして欲しい……やぁっやめちゃ…!…ン…」
秘部を擦っていた動きを止められる事で甘い快楽を取り上げられ、欲しがる琉風に理のキスが落とされる。
「あ…」
唇を離して理が見せたのはどこか優しそうな笑み。
意地悪そうに嗤う顔は数えきれないほど見てきたがこんな風に優しく微笑むのを見たのは
初めてでなんだか嬉しくて、理の首に腕を回してすがりついた。
「んぁっんっ」
そのまま理の琥珀の髪に頬ずりしていると、秘部を圧迫してくるモノ。
入ってくる理の雄は硬くて大きくて。これから与えられるであろう悦を想像し琉風の身体もまた熱を帯びる。
「ん…気持ちいいよぉ……あン…」
この場所でSEXするのが恥ずかしいと思っていた事も忘れて琉風は自分から腰を振っていた。
奥の気持ちのいい場所をめがけて動かすのを繰り返せば理もそれに合わせて動く。
「はぁぁっあんっあんっあんあんあぁぁんっ」
そうする度に理の雄は深く強く当たり、何度も達した筈の身体は簡単にその悦にのめりこんでいった。
「気持ちいいの止まらないっもぉとめられないよぉっあぁっあァァァッ」
気持ちよくてそれがもっと欲しくて、夢中になって腰を振りたくっているとふと感じる浮遊感。
起き上がった理の膝を跨ぐようにして琉風の身体は抱えあげられてしまっていた。
「あふっあっ奥がぁっあぁぁぁんあぁぁぁぁっ」
もうこれ以上は入らないという所まで入れられていたと思っていたのに、更に奥へと雄が突き刺さるのを感じ理の背中へしがみついた。
両手で秘部を広げるように臀部を揉みしだかれ琉風の身体が持ち上げられる。
「あはぁッアァっアァァァァーーーーッッ!」
身体を落とされると同時に下から気持ちのいい場所を雄で圧迫され、飲みきれない唾液が口の端から伝っていった。
「あはっあんっあはぁぁっはぁっはぁぁぁんっ」
突き上げられる動きが強くはやくなり、琉風の口から嬌声は途切れない。
両腕を理の首に回して抱きつけば硬くしこった乳首や立ち上がっている雄が理の鍛えられた身体によって擦れる。
「あうっあんっあぅぅうっあぅっあはぁっあうぅぅぅんっ」
上下に揺さぶられるたび身体のあちこちが刺激され、前から後ろからとくちゅくちゅぐちゃぐちゃ
粘着質な音が聞こえてきても琉風はもうやめてとは言わなかった。
それどころかもっともっと擦れるように足を理の腰に絡ませて密着し、理が与える悦を求める。
「あぁんっ理…ぁ…ン……ンっ…」
悦に溺れながらも理の顔が近づいてくるのが分かると琉風の方から距離を埋め口付けていた。
「琉風、琉風…」
唇の隙間から聞こえてくる名前を呼ぶ理の声が嬉しくて、いっぱいくっついていたくてきゅぅ、と足を絡める力を強くする。
「理っ理ぃっもぉイっちゃうイっちゃうぅっ!あはぁぁっアァァァァ……………!!」
「琉風…琉風…る…か……」
抱きすくめる腕、耳元で聞こえる息遣い、秘部を貫く熱い雄。
そして艶を帯びた自分の名前を呼ぶ理の声を最後に琉風は意識を手放した。

* * *

瞼の向こうの眩しさを感じ、気づくと琉風は月を見上げていた。
すぐ側の窓から差し込む月の光で目が覚めたらしい。
「寒…」
日中暑いとはいえ夜になるとやはり冷える。
背中に当たる温もりへと寝返りをうち、無意識にすりすりと身を寄せ目を閉じた。
(あれ、この温かいのって何?)
そんな思考が琉風の頭を過ぎりそっと目を開いた。
「ひゃ…………」
声を出しそうになり琉風は自分の口で手を押さえてそれを遮る。
目の前には温かいもの――――――眠っている理。
想像だにしない至近距離で、思わず琉風は背中を向けた。
琉風がせわしなく動いていた間も理は起きないのか規則正しい寝息が聞こえてくる。
「び…びっくりした…」
小声でそう呟くと後ろを向いたまま早鐘打つ胸を鎮めるように大きく深呼吸を繰り返した。
事後にこうして1つのベッドで眠るのは何度もあった。
ただ激しい行為の後は琉風が大抵意識を手放し朝まで起きないため、こんな風に『一緒に眠っている』事を意識することなどなかった。
つい先ほどまでの激しい悦を身体がまだ覚えている今は尚更だ。
理の熱くて大きな雄で散々突きまくられた感触を秘部がまだ覚えていた。
奥の気持ちいい場所を何度も、何度も、何度も。
「…っ…!!!」
気がつくとどんどんいやらしい事を考え始め、それを振り払うように首を横に振る。
(シャワーでも浴びてこようかな…)
一度そうなってしまうともう落ち着かなくて、火照りだした身体を冷まそうとベッドから出ようとした時だ。
「!?」
もぞ、背後の理が動いたので振り返ると丁度理が仰向けに寝返りをうった所だった。
(良かった起こしてなかった…)
聞こえる寝息に安心し、はだけた布団をかけなおそうとした琉風の手が止まる。
暗くした部屋でも月明かりのせいではっきりと見える理の裸体。
自分よりもずっとがっしりとした二の腕に厚い胸板、そして。
(何?俺いま何考えて…!)
どんなに気持ちを落ち着けようとしても、熱くなりはじめた身体に自分が理の裸体を見て欲情した事を自覚せざるを得ない。
(恥ずかしいよ…さっきあんなにいっぱいしたのにどうして?)
自身に問いかけた所で身体はもうあの激しい悦をもう一度味わいたいと理を求めている。
「……………」
そのままどのくらいの時間が経っただろうか。ためらいがちにだが静かな寝息を立てる理に顔を近づける。
(ちょっとだけ、起こさないようにほんのちょっとだけ)
そう心の中で言い訳しながら理の唇を軽く啄ばんだ。
「んふ…ン…ぁ…ん」
キスだけと思っていたのにすぐにそれだけで満足出来なくなり、舌を差し入れ無抵抗の理の舌を絡めとる。
(だめ、だめ。これ以上はダメ。理起こしちゃう…!)
考えに反し琉風の手は布団を捲り、その上に自分の身体を重ねると当たった乳首を理の胸へと擦り付ける。
「ん…理…理…ことわり…あん…っ…………!」
切なげに名前を呼びながら身体を擦り付ける琉風の頬に触れる大きな手。
目を開けた理と視線が交わった瞬間琉風の身体が固まる。
「こ…理、これは…あのっ」
「来い」
弁明も見つからずに顔を紅潮させている琉風の頬を撫でながら理はもう一度繰り返す。
「来い・琉風」
「……理……」
親指で唇を撫ぜてくる理に誘われるまま琉風がまた深く唇を重ね合わせる。
「ん…ん…んン…ッ……」
背中へゆっくり回される理の腕に安堵しながら、琉風は与えられる悦の波に身を落とした。




 

 

 

 

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