アシンメトリー
後編

 

あの日はどこかのギルドの傭兵をしてかなりの稼ぎになったとマスター『だった』男はやけに機嫌がよかった。
たまり場と称して私物化していた旅館へ酒を運ばせ女を呼びその夜は大宴会となった。
その中には数人の男娼も混じっており、アサシン装束を着ていたその男は
冒険者でもあったのだろうが恐らくこのような売り行為も行っているたのだろう。
今日はお役御免だとほっとしていたのもつかの間、そのアサシンに捕まり裸にされ
下卑た笑いを浮かべている男に向かって足を開かせられた。
アサシンと絡ませてそれを見て楽しもうというのだ。
『や…やだっ…!』
『やだじゃないの。ご主人様を楽しませてあげなくちゃ』
『違う俺はそんなんじゃ……やァァ!』
見世物のような扱いが嫌で嫌で、後で罰を与えられるとわかっていても呂揮が抵抗した時、
羽交い絞めにしていたアサシンが後ろからこう囁いた。
『あいつ、早々にへばらせてやるから少しの間だけ我慢してて』
アサシンの言った通り、恥ずかしい思いをさせられたのは本当に少しの間だった。
『我慢できなくなっちゃったんだ…すぐに欲しいの。ねえ駄目…?』
普段とにかく行為を嫌がる呂揮に比べて従順とも言えるアサシンの誘いにすっかり気を良くした
元マスターの男はすぐにそのアサシンを連れ寝室に引っこみ、実質呂揮は悪夢のような時間からすぐに解放されることになる。

それがアサシン・新月と呂揮との最初の出会いだった。


「…………新月」
色即是空に加入してから忘れようとしてきた過去がありありとよみがえってくるのを感じ呂揮は新月から顔を逸らすようにして下を向いた。
「なんだお前ら知り合いか」
脱がされかけた下肢を戻し、寝衣の乱れを直しながら不壊が起き上がる。
「知り合いっていうか仕事先で偶然会ったっていうかうーん…」
言葉を濁す新月にまったく口を開かず俯いたままの呂揮。
事情は知らずとも察するものはあったのか不壊はベッドから降りた。
「席外す、2人で話せ」
「ごめんね今度埋め合わせするから、身体で♪」
「阿呆」
短いやり取りの後ドアが閉まり2人だけになる。
呂揮は相変わらず下を向いたまま黙っていた。
「いきなり話しかけちゃってごめん、気が利かなかったよな」
「……………」
「不壊とは飲み屋で知り合ってそれからちょくちょく会ってたんだけど…もしかして不壊の恋人だった?」
「…………………」
「えっとー…俺これで帰るから、なんかマジでごめん!」

一言も言葉を発しない呂揮にすっかり困り顔になった新月だったが、自分が視界から消え去るのが
最善と思ったのかベッドを出ようとした時呂揮はようやく口を開いた。
「ごめんなさい!」
「へ?え?」
言うなり首に抱きつかれ、驚きつつも新月はきょとんとしている
自分の存在に怒っていると思っている中呂揮の行動は意外だったのだろう。
「いや別に呂揮悪くないじゃん。今回のは俺が悪かったよ」
「ごめん新月、ごめん…」
抱きしめた呂揮の手が震えている事に気づいた新月はぽんぽんと宥めるように背中を叩く。
「ねえ呂揮ごはん奢ってよ」
「?」
「実は今日夕飯まともに食べてないんだ。夕ご飯御馳走して。そしたら許してあげるからさ」
「…うん。そういうので新月がいいなら…」
お互い後腐れがないようにするためであろうその提案を承諾すると、新月は早速ベッドから軽快に降りた。
「決まり♪じゃ早速行こうよ。今の時間開いてる店ったら…」
「あ、待って!」
歩き出そうとした新月の腰布を引っ張って呂揮が呼び止めた。
「ん?あぁそっか着替えまだだっけ」
「それもあるんだけど……」
呂揮は持ち込んだ荷物袋の中から『通りすがりの人にもすぐに提供できる!AGI先行レシピ』と書かれた小さな手帳を取り出した。

* * *

「呂揮ってさ、もう転生してたんだね」
厨房に連れて行かれた新月は作業台の隅で頬杖をつきながら軽く着流している呂揮のチェイサー装束を見た。
「うん、スキルも一通り取り終わって今は対人戦修行中」
手慣れた手つきでフライパンのチキンをひっくり返した姿におぉおおと新月は感嘆の声など上げている。
「すっげー、料理とかもできんだな」
「はじめたのは料理当番制の今居るギルドに入ってからだよ。マスターも料理好きだからその影響もあるかな」
手帳を見ながらフライパンの上に呂揮が落としていく塩の粒を眺めながらあれ。と首を傾げた。
「当番制?ここって専属コックが作ってるんじゃなかったっけ」
「俺ここのメンバーじゃないんだ。チュンリムの空即是色って聞いたことない?」
「空即是色空即是色…あ、あるある!防衛記録更新中だっていう明亭の死神と…
 あと脱がせテク半端ないっていう噂の理が傭兵してるギルドだっけ?」
「脱衣チェイサーだからある意味間違ってはいないけどさ…俺そのリィさんと一緒の同盟ギルドにいるんだ」
そう答えながらあらかじめ盛り付けておいた野菜の上に焼きたてのチキンをのせ、新月の目の前に置く。
「はい。うちのマスター直伝レシピのハニーチキン」
「うっわー美味そう!」
感嘆の声を上げてフォークを手にした新月のとなりに呂揮は腰掛けた。
「外で御馳走しても良かったんだけど、こんな時間にやってるのなんて酒場くらいしかないなと思って」
「かな。あと連れ込み宿とか」
「馬鹿」
「あはは。あーチキンうっまー」
「ありがと。飲み物なら付き合うけど新月は何飲みたい?」
「酒!」
「ここの砦内は攻城戦後以外の飲酒禁止。来訪者・研修者も例外なし!」
「ちぇーっじゃあ紅茶!」
「分かった、淹れるから待ってて」

(ホームのみんなもこうやって今日もお茶飲んでたのかな)

食事が終わると当たり前のように彩が準備をして食後のお茶を全員で楽しむ。
ホームでの事をぼんやり思い出しながら呂揮は紅茶の準備を始めた。


「なるほど、じゃあ呂揮はここに研修で来てたのか。不壊とは本当になんでもないの?」
チキンを食べ終わり、食後の紅茶を口にしながら呂揮が九曜にいる理由と不壊の部屋に居た
経緯を聞いた新月は心底不思議そうな顔をした。
「呂揮の安全のために不壊と同じ部屋っていうのも分かったけど健康男子が
 同じベッドで何もないってそっちの方が逆に不健全じゃない?」
「不健全も何も俺恋人いるし」
「えっうそ!?だれだれだれ?」
身を乗り出し興味津々で聞いてくる新月に少しだけ照れた表情で呂揮が答える。
「明亭砦主・空即是色のマスター」
「空即是色のマスターって言ったら澪、だっけ。明亭の死神の?」
「うん。だから不壊さんとどうにかなるなんて事はないよ」
「へぇ〜呂揮ってああいうのがタイプだったんだぁ」
「タイプっていうかそのなんていうか…」
妙にしどろもどろになる呂揮に嬉しそうな表情で新月が笑いかける。
「良かった安心した」
「え?」
「いいギルドに拾って貰えてよかったねって言ってんの。今の呂揮すっげーイキイキして楽しそう」
「うん…すごく楽しいよ」
「『あの時』はなんかそこに居る事を強要されてるって感じだったからさ」
あの時――――新月と初めて会った時の事だろう。
「新月はさ」
「ん?」
「あの時俺を庇おうとしてくれたんだよね。誘うような事言ってわざと元マスターの相手してくれてたよね。俺に興味がいかないように」
空のカップを作業台の上に置くと、呂揮からなんとなく視線をそらしながら何やら照れくさそうに新月はぽりぽり頬を掻いている。
「だってさ、明らかにあそこに居た奴ら呂揮の事まともな扱いしてなさそうだったんだもん。
 俺は金もらって納得した上でヤってたから別によかったけど呂揮はそうじゃなさそうだったから」
「それなのにごめん、嫌な態度とって。思い出したくない過去の中にたまたま
 いたからって俺を庇ってくれた新月まで悪者扱いしようとしてたんだ」
「ん?なんか俺呂揮にされたっけ?美味いもん食ったら忘れるタチだから全然覚えてないな〜俺」
「……ありがとう新月」
言葉に隠された新月の気遣いが嬉しくて笑顔で呂揮がそう言うと、新月の顔が途端にかーっと一気に赤くなる。
「あぁあああやめてやめて、なんか改めて言われるとなんかすごく照れるからやめよう、ね?ね?ね?」
「なに、じゃあ新月は改まった言葉じゃなくて形になるものとかがいいの?」
まくしたてるように言って両手を振る新月をからかうように見ながら呂揮は側にあった大型冷蔵庫に手をかけた。
「新月甘いものって平気?」
「あぁ?うん。全然いけるけど」
「ここに通いで来てる人が元パティシエでさ、ロールケーキ作ってくれたのあるんだけど…こういう形になるものは?」
呂揮の手にフルーツふんだんのロールケーキがあるのを見て新月の目がきらきら輝く。
「はい食べたいですすっげぇ食べたいです!そういう形になるもの大好きです!!」
「じゃあお茶淹れなおすね。俺も一緒に食べる」
即答した新月の前にロールケーキを置くと、早速切り分け始めた。

* * *

真夜中に突如始まった2人だけのお茶会。
今通っている狩場のこと、装備のこと、日常生活の事。
酒も入っていないのに妙に弾んだ。

「ん〜♪食欲で欲望が満たされたし今日はこれで撤収〜」
しっかりおかわりしたロールケーキも綺麗に平らげ、カップに残った紅茶を飲み干すと新月は立ち上がった。
「帰るの?今から不壊さん呼ぼうか?」
「あぁいいよいいよ。今度まとめて朝まで付き合わせるから♪いやーあいつ
 聖職なのに騎士なみの体力ですんげーの。何処とはいわないけどでかいし!」
「もう…馬鹿」
「あははははっ…………ねえ呂揮」
「ん?」
「次に会った時もさ、普通にこうやって話しかけてもいい?」
新月なりに今日の事もあって気を使っているのだろうか。新月の手を取り呂揮は大きく一つ頷いた。
「その時はギルドホームに招待するよ、今度は一緒にご飯食べよう」
「まじ?やった!」
「うちのマスター人呼んで食事を振る舞うの好きなんだ。今のメンバーも紹介するね」
「うっわぁ会うの楽しみになってきた。んじゃ約束、絶対な!」
「うん、約束」
呂揮の返事ににかっと本当に嬉しそうに笑うと新月は蝶の羽を使って見えなくなった。

「話は終わったのか?」
「!?不壊さん!」
背後から声をかけられ慌てて振り返ると何時の間にか法衣に着替えた不壊が立っていた。「すみません不壊さん俺」
いいかけた呂揮の肩を軽く叩く事で遮る。
「自分の中でちゃんと整理ついてんなら俺に言う必要ない」
「……はい」
それから手を廊下の突き当たりへと指さす。
「そのついでといっちゃあれだが一緒に応接室に来てくれるか、客人だ」
「こんな時間にですか?」
歩き出した不壊の隣に並びながら見上げると小さく頷いている。
「あぁ、砦が絡む話は時間を選ばない事が多いしここでは珍しい事じゃない。悪いが今からその客人の応対を頼む」
「それは構いませんけど…新参の、ましてや研修で来てる俺とかで大丈夫なんでしょうか」
「同じ砦を防衛してるからといって他の砦を持つギルドと全く関わらないって事はないだろ、これも研修の一環と思ってくれればいい」
「そうですね。分かりました」
この研修は攻城戦で自分が役に立てる事を少しでも増やすためにと呂揮が自ら志願したものである。
もしかしたら明亭の―――澪の役に立つかもしれない。その考えは呂揮の気持ちをすぐに切り替えた。

「すまない待たせたな」
「!!!」
応接室のドアが開き呂揮の視界に入ってきたのは伽羅色の髪を結い上げたプロフェッサーの後姿。
「不壊さんあの」
「神器交換でなにかと世話になっているギルドマスターだ。くれぐれも失礼のないようにな」
呂揮の言葉を遮るように言い切ってしまうと明らかに確信犯的な笑いを浮かべ不壊は部屋を後にしてしまった。
「……………」
突然のことでどう言葉をかけていいかわからずその場から動かないでいると
後ろを向いたままだったプロフェッサー――――澪が振り返る。
「呂揮」
「…………澪っ…」
名前を呼ばれた瞬間心よりも先に身体が動いていた。
呂揮が駆け寄り抱きつくと、驚くこともなく当たり前のように澪はそれを抱きしめる。
身体を包む腕の感触、澪の匂い、頬を擽る長い髪。
『澪』をひとしきり堪能した後やっと我に返って照れくさそうに顔を上げ、嬉しそうに呂揮の髪の毛を指先で弄んでいる澪を見た。
「想像以上の熱烈歓迎で嬉しいよ」
「どうしてここに?」
額にキスを受けながらそう問えば澪はきょとんとした顔をする。
「どうしてって、研修中の逢引きは恒例みたいなものでしょう」
「………もしかして前回のリィさんと琉風の事も知ってたんですか?」
「ちょっとおしゃべりしただけで琉風がぽろぽろ口を滑らせてくれたよ」
「もう、隠し事本当に下手くそなんだから琉風はぁ…」

数か月前、理が神器交換条件の一つとして10日間九曜に加入した際、
理に会いたいという琉風の望みを叶えるため蘇利耶と共謀しこのイスネルフへ送り出した事があった。
交換期間中は所属ギルドとの接触は禁じられていたためこの事はくれぐれも
内密にと言っておいたのだが、その時点でかなり挙動不審に陥っていた琉風にはやはり無理だったらしい。

「だから俺も同じ方法を使わせてもらったの。呂揮が戻ってくるあと1週間を待てそうになくて」
頬を撫でながら憂いを帯びた視線と共に投げかけられた言葉に呂揮の心臓が跳ねる。
呂揮に会いに澪がイスネルフに来た、それは同時に―――――。
答えに行き着く前に『こちらを見なさい』と言わんばかりに顔を近づけられる。
「自分の都合でいつも呂揮を待たせるくせにいざ逆の立場になったら
会いたくてたまらなくなった。呂揮はいつもこんな思いをしていたのかって」
「俺も…俺もっ…」
こみあげてくる澪への愛しさに自分も澪に会いたかったのだと今更ながらに自覚し、感情に任せるままに口づけた。
「んっ…ん…」
差し入れられる澪の舌を受け入れた所でここは応接室だったのを思い出し、
慌てたように澪の胸に手を当てるがさらに深く咥内を貪られてしまう。
「ぅ…んッ…あ…んぅっ」
胸の手の力は徐々に弱まり最後にはなすがままになった頃にやっと唇が離れていった。
「あ…澪…」
どこか名残惜しそうにちょろりと紅い舌を出している呂揮の身体を軽々抱き上げ向かい始めたのは奥にある客人用の寝室。
澪が何をしようとしているのか分かった呂揮は何かを言いかけるが、そのまま何も言わずに澪にもたれかかった。
「何も言わないんだね。『場所を考えてください』とか『今はダメです』とか」
からかうようにそう言われても頭を澪に擦りつけ甘えるような仕草を繰り返す
呂揮にやれやれと口に出しながらも背中を撫でさする仕草はどこまでも優しい。
「しばらく見ないうちに甘えん坊さんになったね。もう1週間我慢できるの?」
「…………」
「このまま一緒に帰ってきてもいいんだよ」
ずっと黙ったままですがっていた呂揮がそこで首を振り、口を開く。
「ちゃんと我慢できるように…たくさん愛して」
誘っていると自覚しているのだろう、顔が見えないように澪の肩の付け根に
額をぐりぐりとくつけたまま動かない呂揮の淡い紫色の髪に口づけが落とされる。
「いいよ。あと1週間ちゃんとがんばれるように沢山愛してあげるからね」
「ふぁ…んッ…」
たどり着いたベッドに下ろされると同時に慣れた手つきで澪の手が這い呂揮の衣服を脱がせていく。
されるがままになりながらも呂揮は澪のミニグラスを外し、自分にしてくれたのと同じように伽羅色の長い髪へと口づけた。
「あぁ…ン…澪……俺が先にっ…」
胸をまさぐってきた澪の手をやんわりと止め、まだ身に着けたままのズボン越しから澪の雄に手を当てる。
「呂揮からしてくれるの?」
「だめ…ですか?」
「だめじゃないよ、して」
その返事にどこかほっとしたように呂揮は四つん這いになると、澪の足の間へと顔を近づけて行った。
今澪から愛撫を受ければきっといつもよりも激しく乱れ、それこそ獣のように欲しがってしまうだろう。
がっついていると澪に思われるのがなんとなく恥ずかしかった。
身体を過剰に触れられなければ少しは落ち着くのではと思っていたのに、
ズボンを寛げ露わになった澪の雄を間近で見るとそれだけで下半身が熱くなる。
いつもとろけるような快楽を与えてくれる、大好きな大好きな恋人の―――。
「んッ…」
今すぐ根本までむしゃぶりついて舐めまわしたい衝動を一生懸命堪えながら呂揮は澪の雄へ舌を這わせた。
「んむっ…んっンッ…」
まだ兆しを見せない澪の雄を両手で添え、先端を咥えるとゆっくりと一度口に含む。
ちゅぽん、と音を立てて口を離した後は根本に口づけながら握りこんだ雄を丁寧に扱いてやった。

(どうしよう、舐めてるだけでもすごい感じてきちゃう…)

浅ましい性欲を悟られないための澪への奉仕だったが、もうそれは呂揮の欲を煽る手段でしかなくなっていた。
こんな風に自分のココを弄られたい、舐めている雄を秘部にねじこまれたい。
「んっンッん…む…んぅ………ン」
次から次へと湧き上がるいやらしい願望を振り払うように咥内で熱く硬くなっていく
澪の雄を夢中で舐めまわしていると優しく頬に手を添えられ顔を上げさせられる。
「おいで呂揮」
「でもまだ…」
「沢山愛してほしいんでしょう?おいで」
唾液の糸を引かせながら澪を見上げている呂揮に囁きかける恋人の誘惑。
「………はい……」
まるで魅了されたかのように澪の上に跨るように抱きつくと、
完全にそそり立っていた呂揮の雄を澪の指が擽るように撫でてくる。
「…っ…ン…………ふぁぁあっあぁんっ」
こんな僅かな動きにさえ声を出してしまう自身が浅ましく思えて口を結ぼうとするも、
臀部に伸ばされた手がそのままぐにぐに揉み始めると殺しきれずに口から零れてしまう。
指を喰い込ませながら澪の手で揉みしだかれ、時折指が思わせぶりに秘部へ触れてくる。
「ふぁんっ…あ…ンッ…そこを…」
指の腹で掠る程度の刺激に焦れて腰を捩じらせる呂揮の姿に澪は目を細める。
「ココを…こう、かな?」
「あンッッ!!」
中指がいきなり根本までねじ入れられ、悲鳴に似た高い声を出しながらもこくこくと何度も呂揮は頷いた。
「もっと…それをもっと…」
「素直ないい子にはご褒美をあげないとね」
「…!」
ご褒美と言われそれがどんなものを想像してこくん、と喉を鳴らしてしまう。
そんな呂揮の頬にキスが落とされ、その身体はベッドに横たえられた。
「ふぁ…あぁっ」
澪の中指と薬指がゆっくりと秘部の中へ入れられていくのを見ていた呂揮が首を左右に振る。
「やぁ…足りなっ…もっと…」
「慣らすまで少し我慢しなさい。痛い思いをするのは呂揮なんだから」
「やぁっお願い焦らさないでぇっココを…ココをもっと…!」
一度快楽を与えられてしまえば後はなし崩しで、身体は更なる悦を求める。
もっともっと激しくして欲しくて呂揮は手を伸ばし自分の中指と薬指も入れるとくちょくちょとかき回し始めた。
「自分から指を入れるなんてお行儀が悪いよ」
「あぁんッッ!!」
乱暴に奥にねじ込む動きは正に呂揮が望んでいたもので、4本の指を
飲み込まされている秘部はさも嬉しげに真っ赤になってヒクついている。
「いい子だと思っていたらとんだ悪い子だ。悪いのは…ここ?」
「あぁぁっふあっあんっアァァァァァァッッ!!」
ぐちゃぐちゃと秘部の中をいっぱいかき混ぜられ、澪の中指が奥にある
気持ちのいい場所を掠める度に呂揮の雄からは雫がだらだら滴っていく。
「自分でしてる所を前に見せてくれた時は恥ずかしそうにしていたのに今はこんなにあられもなく指を動かして…」
「だって…ぇ…止められなっ…あぁんいぃっソコ気持ちいぃもっとぉっあんっふぁっあんッッ」
自分の2本の指がナカを擦っていれば澪の2本の指が激しく何度も抜き差しを
繰り返され一種の自慰行為だと分かっていても気持ち良くて指を止める事が出来ない。

「指だけでこんなに乱れて…俺のが入ったら呂揮はどうなっちゃうんだろうね」
「!!……あっあんイクッふあぁぁイっちゃうイく……ぅ………!」
腰を左右に振り、澪に見せるように呂揮は精を吐き出す。
「すぐにイっちゃったね。俺に入れられた所でも想像した?」
「…!!!…」
答えはなくとも顔はおろか身体まで薄紅色に染める呂揮の姿を見ればそうだと言っているようなものだ。
「あぁっあっあんっ」
両手の甲で顔を覆っている間に呂揮の足は大きく開かせられていた。
ヒクつく秘部に澪の雄が押し当てられると興奮は増し、無意識にごくりと喉を鳴らしてしまう。
「目の前に本物が居るんだよ?想像なんかよりもっともっといい思いをさせてあげる」
「澪っ………あ…ふぅ…ぁ……アァァァァーーーーーーッッ!!!」
いつもなら全身をたっぷり愛撫され、強請らせられて漸く与えられるものが
今は突然と言っていいほどいきなり呂揮の内部を押し広げ突き上げてきた。
「ほら呂揮の欲しいもの、これでしょう?」
「…アァ…ふ…ぅ…アァァァァァァァッッ!!」
ずぐっとイイ場所めがけて突き上げられ、何も考える間もなく呂揮は軽く達してしまっていた。
「ふぁ…ンっあんっふあぁっあぁんっ澪っ澪ぉぉっあぁぁぁ澪ぉぉぉッッ」
達した直後も立て続けに気持ちいい部分を雄で攻められ、頭で考える暇もなくただ与えられる悦に呂揮は鳴き続ける。
いつもとは違う澪の性急さに驚きながらも身体はそれを悦んでいた。
「ふぁっあっあ…ァ…アァァァ……………!!!!!」
奥の奥を突かれ続けまた達してしまう。
「あぁぁぁイクっまたイっちゃ…ふあぁぁ澪ぉっソコは……あぁぁぁそこはぁぁぁぁッッ!」
「そこが、どうしたの?」
「やぁぁぁ澪ぉっソコはぁぁっあぁんソコばっかりはヤァァッヤァァァァっヤァァァァァァッッ!!」
気持ちのいい場所に澪の雄が容赦なく当たり呂揮は短い間に
精も出さぬまま、まるで女のように何度も何度もイき続ける。
そんな自分の身体がいっそ怖くなって悲鳴のような声を上げ嫌がって
見せても呂揮の秘部はそうされる事が嬉しいと言わんばかりに断続的に澪の雄を締め上げた。
「嫌?でも呂揮のココはとても悦んでいるようだから…もっとしてあげようね」
「…そんな……アァッアッアァァァッあンっ出るぅっあぁんイっちゃうぅあぁぁぁ…ァ…………!!!!」
腰を押さえつけられながら自分のナカでどんどん熱を帯びていく澪の雄を身体の深くで感じ一瞬頭が真っ白になる。
半分意識を飛ばした状態で呂揮が精を吐き出すと、そこでやっと澪が動きを止めた。
「はぁ、はぁ…」
激しさが止み、呂揮はなんとか呼吸を整えようとする。
「はぁっ…ふぁ…んッ…あっふあぁぁッ」
そうしたいのに乱れた息はおさまらない。まだ秘部の中にある澪の雄の存在が呂揮の熱を落ち着かせてはくれなかった。
動いても居ないのに感じてしまい、顔を紅潮させながら喘いでいる呂揮を見下ろしながら澪は薄く微笑む。
「嫌嫌言いながら随分気持ちよさそうに沢山イってたね。何回?」
「そ…そんなの…しらな…あぁぁイクっイくぅぅぅっふぁ…ぁ………ッ…!!!」
不意打ちのように入っていた雄が気持ちのいい場所をぐぐ・と圧迫し、
すっかり敏感になってしまった身体はすぐに精も出さずに達してしまう。
「ほら、またイった」
「やぁ…これ以上はおかしくなっちゃう…俺だけじゃなく澪も……んっ」
小刻みに身体を震えさせながらの呂揮の哀願は最後まで言わせてもらえずに澪の唇で塞がれた。
「んっんぅ…ふ…ぁんっ…」
繋がったまま抱きすくめられ施される大好きな澪のキス。
身体のあちこちで澪を感じ、快楽をどこにも逃がすことも出来ないまま精にまみれた呂揮の雄はゆるゆると再び立ち上がる。
「1週間我慢できるように愛してほしいんでしょう。今は俺に気持ちよくイかされる事だけを考えなさい」
「そんな…澪…みお………あ…あ…ふあぁぁっあんっ」
何かを言い返そうとしても両乳首をいきなり人差し指で転がされ、呂揮から言葉を奪う。
「他の事なんて考えなくていい。出来るようになるまで何度でもイかせるよ?」
「やぁ…やぁぁっそんなのやァァッあぁっあんっあぁんっあぁぁんっっ」
なんとか言葉を、と思うのに呂揮の口から出てくるのは意味をなさない悦の声。
首を振って否定してみた所で完全にそそり立った雄の先端がとろとろと流れ落ちる雫は止まらない。
「激しく貪られたいって、滅茶苦茶にされたいって、そういういやらしい目で俺の事をずっと見ているのに嫌な訳ないでしょう」
「!!…い…………やッ………あっやぁぁっやめてやめてヤァァァァァァァッッ!!!!」
「またそんな嘘をついて…うそつきな子はこうだよ」
そそり立つ呂揮の雄に澪の指が巻き付くと、くちゅくちゅと先端から溢れた雫を絡めるように上下に扱き始めた。
「あぁぁっアァァァッッ!やめてぇッ一緒にしちゃ…あぁぁぁだめぇ一緒はだめぇぇぇやめてぇぇッ」
雄への刺激と合わせて秘部には澪の雄が突き刺さり気持ちのいい場所をぐいぐいと攻めたててくる。

『こんな風に澪にいっぱいいっぱいイかせられたかった』

秘密にしたかった欲を見透かされ、零れる涙がそれの羞恥のものなのか分からない。
分かっているのは今されている事が気持ちよくてまたイキそうになっているということだけ。
「だめぇもぉイっちゃうよぉっ許してお願い澪ぉぉっゆるしてゆるしてアァァァァァァッッ!!」
何度も許しを請うても動きはおさまるどころか一層激しくなる。
「許さないよ、このままイきなさい呂揮。激しくイって今までどれだけ
 我慢していたのか、俺をどれだけ欲しがっているのか見せてごらん」
「あぁぁっふぁっふあぁぁんっあぁっあんっあぁんっあんっっ」
もう鳴く事しか出来なくなった呂揮を見る澪の瞳は艶を帯びながらもどこか優しい。
「いやらしい所も浅ましい所も、呂揮の全部を愛してあげるよ」
「み…お…澪……ア…ァ…………………!!!」
澪の視線を感じながら呂揮はもう我慢することも出来ずに精を吐き出してしまう。
「呂揮…」
動きが止まり、達した余韻を味わいながらそっと身体を重ねてきた澪に擦りついた。
「…貴方を」
ずっと鳴き続けていたせいか掠れる声、それでも一生懸命呂揮は言葉を紡ぐ。
「貴方を…欲しがってもいいですか…?…浅ましく、あられもなく求めていいですか…?」
「いいよ。だって俺は呂揮だけのものなんだから」
迷うことなく返ってきた答えに安堵しながらも、唇を舐めて澪に続きを求める。
「澪…澪っ…」
焦がれ、愛しむ存在が自分だけのためにある。
恍惚とした表情で澪を見上げていたが、ふいに再開した動きでその顔はすぐに艶を帯びた。
「あっ…ふあぁぁっふぁんっいッ…アァァァァァァッッ!」
イク、と思った時には嬌声を上げまた精も出さずに達してしまう。
「あんっまた…あぁんイっちゃうふあぁんイクぅ…澪のでっあぁぁぁ澪ぉぉっ」
「いいよ呂揮、たくさんイきなさい」
さっきあれだけイったのに攻められればいとも容易くイク身体。
自分の身体なのにどうする事も出来ないのがもどかしくそして怖い。
それでも抱きしめてくれる腕と名前を呼ぶ澪の声は呂揮を安らがせ、そしてSEXにのめり込ませていった。
「ふあぁんっあっふぁんっ気持ちいいっ澪ぉっあん澪っ澪っあっあんっ」
「……っ…」
愛しい恋人の名前を何度も呼びながら腰を振る。
自らの嬌声に紛れて聞こえてくる澪の悦を帯びた吐息は呂揮の欲情をさらに煽った。
「…全部飲んでくれる?」
「うん…うん…きてぇ全部頂戴っ…あぁぁぁ澪っ澪っアァァァ……………!!!」
奥深くが一際熱くなったと感じたと同時、呂揮は精を吐き出していた。
「あっアァ…ふぁ…ン…あついよぉ………」
熱い澪の精が流し込まれるのが嬉しくて断続的に締め付けを繰り返す。
全て注がれた後に引き抜けば秘部から吐き出された澪の精がとろりとシーツに伝い落ちていく。
「澪っ…あぁっあんッ……」
自分を見る澪がどこか嬉しそうに笑っている。
どんな視線を送っているか呂揮にも自覚はあった。
「無言の情熱的なお誘いだ」
「んあぁぁっ」
双丘に澪の指が伸び、人差し指と中指で広げられた秘部はさも物欲しげにヒクついている。
「さっきみたいに気持ちよくしてほしいの?」
「あぁっあぁっふあっあうぅんっ」
3本の指で秘部の入口を捏ねるように動かされ、頷きながら呂揮は腰を揺らした。
その姿を澪に見られていると思うと身体が自然と熱くなっていく。
圧迫した状態で入口を捏ねていた指はいつしか中に入り込み、掻き出しはじめていた。
「あぁんっふぁんっあぁぁぁあうぅんッ」
たっぷり注ぎ込まれたそれは指を曲げるように動かすたびに秘部からあふれ出てくる。
「はう…ぅんっ」
引き抜かれた指の代わりに澪の雄が押し当てられその硬さと熱さを直に感じてしまえばもう興奮を隠せない。
「あぁ…み…お…」
そのまま澪は雄の先端で呂揮のモノを上から根元にかけてつぅ・と撫ぜ、たどり着いた真っ赤になっている秘部を軽く圧迫する。
「きて澪…いっぱい気持ちよくして…」
覆いかぶさる恋人の背中に腕を回してくる呂揮の唇へ澪の唇が重なったと思うとくぐもった甘い悲鳴が部屋に響き始めた。

* * *

「よーいせっと」
そんな掛け声と共に不壊の出したワープポータルにぐったりとしたクリエイターを投げ入れたのは呂揮になにかと世話を焼いていたクラウンだ。
「これで全部ですか?呂揮をヤっちゃいましょう計画を企ててた奴らって」
「あぁ、今夜強硬手段を計画してたらしい」
「でも結局バレてこのザマ、この事を呂揮に気づかれないよう空即是色のマスターにおいで頂いたって訳ですか。
 おーおー明かりついてるって事はまだ続行か…いてっ」
僅かな光が漏れてい来る来客用寝室の小窓を仰ぐクラウンを窘めるように不壊が裏手で腕を叩く。
「研修とは言え人様のギルドメンバーをお預かりする立場だからな、
 精神面のケアも気をかけるのは当然だ。彩からもその辺りの事は頼まれていたしな」
「真夜中に〜たたき起こさ〜れて〜♪サービス労働させられちゃう〜ギルドメンバーの事も〜いたわってほしぃですぅ〜♪」
「無駄に綺麗な音程で歌ってんじゃねえよ。その割には率先してバリバリのしてたじゃねえか」
「強制労働に対する八つ当たり半分と呂揮に対するお礼半分ですかね。呂揮からは
 蘇利耶ちゃんの色即是空ホームステイ日常生活話とかサービスしてくれましたし?
 ってかこういうのっていつもなら出雲さんの役目じゃないっすかね〜」
「出雲なら応接室前の警護を任せてある」
「えっなにそれってSEXの邪魔が入らないようにって?」
「まぁそうともいう」
「ぎゃはははは!出雲さんマジで南無い!!!」
片手で顔を覆い南無といいつつもクラウンの表情は明らかに笑顔だ。
「おい」
「はいはーい?」
かけられた不壊の言葉の雰囲気で察したのかおどけた返事をしたもののクラウンの顔からは笑顔が消えた。
「呂揮が過去に所属していたギルドについては何か知ってるか」
尋ねられたクラウンは小さく肩を竦める。
「まぁ俺も対人長いですからね。世間一般レベルよりちょっと詳しいくらいには知ってますよ」
要するに呂揮が前のギルドでどういう扱いを受けていたを知っているという事なのだろう。
「…とりあえず今回の件は呂揮には黙っとけ」
言葉少なでも不壊の意図を理解したクラウンが小さく何度も頷いた。
「へいへい了解。黙ってるから明日の朝メシ蘇利耶ちゃんの隣で喰いたいっす不壊様」
「善処しておく」
「うひゃっほぉ!!最近仲良しこよしのアサシンと〜♪ヤりそこなっても不壊様太っ腹〜♪」
「だから無駄に綺麗な音程で歌ってんじゃねえよ」

* * *

澪が帰っていた後の1日、PVでのチーム戦を表向きは『体調不良』という形で呂揮は
休んでしまったもののその後の日程は滞りなく、そしてあっと言う間に過ぎて行った。
明亭防衛の時とはまた違うさまざまな体験をしたのもあるが、2週間会えないと思っていた澪と
会う事が出来た事で時間を短く感じたのもあるだろう。
そして何より過去の出来事からなかなか表出できなかった澪への浅ましいとも言える
想いをすべて受け止め愛して貰えたのが大きな理由だったかもしれない。

「2週間でもなんだか懐かしいな…」

予定していた研修期間を終え、イスネルフ前で蘇利耶らに見送られながら不壊の出した
ワープポータルに乗って降り立ったのはプロンテラ城北門前。
門向こうの見知った風景に呂揮は無意識にそんな事を口に出していた。

「あっ呂揮君だ!おーい呂揮くーん!!」

名前を呼ばれきょろきょろ辺りを見回すと丁度進行方向の露店の一角から四季奈がぱたぱたと手を振っているのが見えた。
「こんにちは四季奈さん」
露店の妨げにならないように露店同士の脇に入ると、ホムンクルスの『おハネちゃん』に
エサを与えつつ露店を出している四季奈へ軽く会釈をする。
「呂揮君がプロにいるって事は九曜の研修おわったのかな?」
「はい、これからホームに帰る所です」
「そっかー2週間お疲れ様!」
「四季奈さんこそいつも露店お疲れ様です」
「はきゃぁあああ…♪慣れない研修帰りにも関わらずあたしの事気遣う呂揮君超優しい萌える…!」
「あはは……えっと、今日史乃はいないんですね。いつもこの時間帯は露店してる事多いんですけど」
「あぁ、史乃くんなら多分ホームだと思うよ。今日色即是空は誰も何処にも出かけないでいるんじゃないかな」
「え?」
「おとといの攻城戦合同会議で彩マス言ってたもん。呂揮くん帰ってくる日は皆で出迎えるんだって」
「……………………」
「あっあっその顔!すごく嬉しいけど一生懸命顔に出さないようにしてるその顔かわいい超萌えるうぅぅうううう!!!!」
主人の横で大人しくしていたホムンクルス・おハネちゃんに埋もれ身悶えている四季奈の肩に呂揮は手を添えて宥めてやる
「し、四季奈さん落ち着いて下さい」
「はっ!!あたしってばなんか呂揮君足止めしちゃってごめんね!色即是空の皆が待ってるから早く行ってあげて」
「今夜改めて明亭へ報告に行きます。クリエイターのデータも取ってきてますから」
「本当!?楽しみにしてるから!って…今日?今日来てくれるの?」
「はい、もしかして都合悪かったですか?」
四季奈は違う違うと顔の前でぱたぱたと手を振って見せた。
「そうじゃなくて、今日帰ってきたばっかりなんだから今日はゆっくり休んで日を改めてもいいんだよ」
「おおまかなデータだけでも欲しいから今夜帰還報告に来るようにって澪マスから言われてるんです。だから今日」

ばしぃぃぃぃぃっ。

四季奈が所持するドーム型のカートを叩いたキレのある音に周囲の視線が一斉に集まった。
「ちょっ!!!!何その陰謀!!!!建前よねそれ建前よね!!!絶対別な意味の帰還報告だよねはきゃぁああぁぁぁあ陰謀すぎるぅぅぅぅぅ!!!!」
そのままびしばし連続でカートをたたき出した様子を、すぐ隣で露店を出していた
商人が『何かドえらい人のとなりで店を出してしまった』という顔で視線を泳がせている。
「あのっ四季奈さん。みんな見てますから落ち着いて…」
周囲を気にしながら困ったように宥めるが、このやりとりもどこかホッとする。
『帰ってきたんだ』と思わずにはいられなかった。

もうニヤけて顔見せれないとカブキマスクをすっぽりかぶった四季奈と別れ、
噴水広場・精錬製品や鉱石類を売る露店通りを抜けるといよいよホームへ帰る時の
見慣れた風景に差し掛かり、自然と呂揮の足取りも速くなる。

「ただ」
「おかえりぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
ホームのドアを開け『ただいま』と言い終わらない内にがばぁっと誰かに抱きつかれる。
心地よい腕に頬を触れる柔らかい金髪の感触、そして2週間でもなんだがとても懐かしく思える匂い。
「研修から戻りました彩マス」
「おかえりーおつかれーおかえりーーーーー!!」
言いながらも抱きついたまま離れない彩を、そして呂揮へとなんとも言えない史乃からの微妙な視線が注がれているのが分かる。
ごめん史乃、と心で呟き彩の背中に手を回しながら『家』に帰ってきたのだという事をしみじみと実感する。

「おかえりー?」
「おかえりぃ呂揮、おみやげはぁ?」
「オカエリ」
「おかえり呂揮!」
「呂揮くんお帰りなさい」

「ただいま!」

代わるがわるかけられる言葉にやはりべったり抱きついたままの彩の肩越しから照れくさそうにしながらも、嬉しそうに呂揮が答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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