お願い。大嫌いでいさせて。
『ねえ』
『……』
『聞こえてるんでしょ?』
『聞こえてねぇ』
『本当意地悪だなー。結局最後まで君の口からYESって言葉を聞けなかったね』
『物申したければ剣でも杖でもとってチュンリム03までドウゾ。心を込めてひんむいてやっから』
『…琉風って子さ、綺麗なライトグリーンの瞳だよなぁ。泣いて潤んだらきっともっと綺麗なんだろうね』
『wis誤爆かよ・だっせ』
『あはは、知らないフリするんだ。まぁいいけど?』
「こーらリィっ」
エンペリウムのそばに腰掛けていた理の頭部がずしっと重くなる。
「澪マス、頼むから大百科事典の、しかも角で叩かねえでくれる?」
「死神の名簿でどつかれたくなかったらさっさと偵察行ってくる」
「…了解」
理の頭を叩いた大百科事典を肩にぽんぽんと乗せている教授―――澪の前を通り過ぎようとして止まる。
「なぁ、今日『あいつら』って来てないよな」
「ん?あぁ、あのいっやらしい攻め方するギルドのことか?前にリィが
フルストリップで裸同然にひんむいて俺のソウルバーンで精神力からっぽになった上に
メンバー総動員でお帰りねがったハイウィザードのいる」
「あんなこっ恥ずかしいお帰りを強要された上にそんな風にしか
覚えてもらえねぇなんて相手もさぞ光栄なことだろうな」
「そういえば今日は見てないかな?あの脱がされ方は見ていて結構爽快だったしまた来てくれないかねぇ」
「そ・でさ澪マス」
「はいはい、何?」
「オレ今からバッくれっから」
「ちょちょちょちょちょちょ、ちょっとお待ちなさいよリィちゃん」
理の腰周りに腕を回して引き止めるように澪が抱きついてくる。
「……ちゃん呼ばわりした上にドサクサにまぎれてオレの服の中に手ェ突っ込むなっての」
「いや、向こうで女の子たちがすごいキラキラ期待した目で見るからなんかやんなきゃなと」
服の中に手をすべりこませて背中を直に撫で回していた澪の袖を掴むと理はぐいっと引っ張った。
「まーまーまーまー冗談はさておきね?」
ぺちぺちと理の胸板を叩く。
「攻城戦真っ只中にそのバッくれ宣言はいかがなものかと思うのよ、
脱がし役がいないとマスターちょっとだけ困っちゃうんだよな」
「澪マスがやりゃいいだろ。『脱がすのは得意』なんだろ?」
「あれはベッドの上での話!…そもそも、突然急に抜けるような事情でもある訳?」
「用事思いついたから」
それを聞いた澪の口が半開きになって固まる。
「思いついた?『思い出した』じゃなくて『思いついた』?」
「あぁ、思いついた」
「うっわー…そーゆーこと言っちゃうのね?」
「別にいーじゃん澪マス。偵察ならあたし行くよぉ?」
エンペリウムのそばにある手すりに座っていた莉良が飛び降りて澪に近づいてくる。
「用事思いついた人間にすがることもないじゃん。行かせちゃえば?」
「はいはいはーい!!」
澪が何か言おうとした瞬間、理と澪の立っている間から一人のチェイサーが突然沸いて来る。
「チェイスウォークとフルストリップ取得してきました!!
偵察も脱がしもこなせます!!おれすっげ偉くないです??」
「それは偉い…もう偉すぎるぞ呂揮…!褒美にマスター自ら撫でてやろう!」
澪が呂揮の身体をがばっと抱きしめると、途端に呂揮の顔が赤くなる。
「ちょっ澪マス!なんでそこで尻撫でるんですかっ!!」
「撫でると言ったら尻に行くのが常識だろう?」
「非常識です!そしてなんで莉良の時だけちゃんと頭撫でてるんですか!」
右腕で莉良を引き寄せ頭をくしゃくしゃと撫でている澪に食いつく。
「呂揮…女の子の尻なんて触ったらセクハラじゃないか」
「じゃあおれだってセクハラじゃないですか!」
「わからない奴だな、あれはセクハラではなくスキンシップというのだ!」
「どっちもでいいですから尻揉まないでくださいってば!!」
呂揮の臀部を揉み続けたまま理に向かってにこりと澪が微笑む。
「とゆーわけでリィ、お前いなくていいよ」
「あぁ・んじゃな」
軽く手を上げたあと、理の姿はエンペリウムルームから消えた。
「ごめん澪マス…コトいないと本当は困るよね」
撫でられたた澪の手に莉良は自分の両手を乗せてつぶやく。
「この状況で抜けるってことはよっぽどの事だったんだろ。
二人ともそういうことがわかってたから、リィのこと行かせたんじゃないのか?」
澪の言葉に呂揮が小さく頷いた。
「きっとあのハイウィザードに関係あると思います。あいつリィさんのこと
引き抜くつもりだったらしくて、リィさんつっぱねたあともかなりしつこく付回してたみたいですから」
「他のメンバーにも何人かwisしてうちの内部事情探ろうとしてた様子だし、肉親である莉良を人質にしようともしたしね」
「あれってあたしが人質にされるためだったの?おいかけっこだと思ってたよ」
「まぁ…被害が小さいから放っておいてるけどね。メンバーにこれ以上危害加えるなら潰すよ」
「澪マス…ちょっとだけかっこいい」
「呂揮、それは違う。ちょっとじゃなくてすごくかっこいいの」
「だから!いい加減尻から手を離してくださいってば!」
臀部を撫で回し続ける澪の袖を引っ張り上げ手を離させる。
「呂揮までお袖を引っ張るのはやめておくれよ…お陰でこんなにびろびろに伸びてしまったじゃないか…」
「もともと伸びてます!っていうかもっとリィさんみたいにこう、沈着冷静でいられないんですか?」
「リィが?」
「そうです」
「わかってないねぇ呂揮」
「わかってないなぁ呂揮」
「???」
澪と莉良が同時に言ったのをきょとんとした顔で呂揮は見つめていた。
* * *
『俺ってここまで学習能力なかったのか』
床に顔を着けたままの状態に琉風が一番最初にそう思った。
拠点にしていたアルデバランの街でプロンテラのワープポータルがないかと騎士に声をかけられた。
出そうとすると、他にもメンバーがいるので一緒にと言うので承諾した。
騎士に案内されるまま付いていくとある建物の中に入るように促され、中に入ったと同時に
複数の人間に押さえつけられ口に薬のようなものを嗅がされた。
嗅がされたものが何か身体を麻痺させる作用のあるものだったらしく、動けなくなった所を
その中の一人のプリーストが出したワープポータルに押し入れられた。
着いた場所とはさっきとは違う建物の中で、所持品を取り上げられた上に
両腕ががっちりロープで縛られ、ごろりと床に転がされたのだ。
展開は少々違うものの、
『知らない人間にホイホイついていって痛い目を見た』
というかつて味わった苦い過去と同じ状況に情けないものがこみ上げてきた。
自分の周りにはハイウィザード、アサシン、琉風に話しかけた騎士と、プリーストの4人。
「ようこそお姫様。気分はどうかな?」
そう琉風に聞いてきたのはハイウィザードだ。
「…超最悪」
「あははは、だろうね」
嗅がされた薬のせいか意識ははっきりしているものの身体がどうにも上手く動かないのだ。
「身体、動かないでしょ。本気で暴れられたらさすがにちょっと困るから、
そういう薬使わせてもらったんだ。悪く思わないでね?」
「…俺なんか捕まえても価値なんかないと思うけど」
「そうだねぇ。ワープポータルとかで逃げられないようにって君の
荷物没収させてもらったけど、本当金目のもの何にもなかったしね」
自分では認めているものの他人にいざ言われると腹が立ってきて、
琉風は口を結んでハイウィザードを睨み付けた。
「別に金品目的で君のこと拉致したわけじゃないよ」
そう言って琉風の顔を覗き込む。
「理」
「!!」
ハイウィザードの口からその名前を聞いた琉風が明らかに表情を変えた。
ただ笑ってそれをハイウィザードは見つめている。
「もちろん知ってるよね?ご主人様の名前だもの」
「そんなんじゃない…!」
「じゃあ恋人?」
「違うっ!!!あんな奴大嫌いだ!!」
一際大きな声で琉風が叫んだ。
「あははっすごい嫌われようだなぁ。こんなに力いっぱい否定されちゃって理かっわいそー」
「恋人なわけないだろ男同士なんだから!!」
「その言い方、男同士の恋人なんてありえないみたい」
「当たり前だろそんな…」
「じゃあ。男同士でSEXするのもありえないんじゃない?」
ハイウィザードの人差し指が琉風の乳首につん。と触れる。
「っ…!」
「知ってるんだよ。君と理がそういう『ありえないこと』してるの」
乳首に当てられた指がくりくりと円をかくように動き琉風は口を結んで声を殺そうとする。
「いつも一緒にいるわけでもないしギルドも一緒じゃないからペットかSEXフレンド
あたりかなって思ったんだけどそうじゃない。かといって恋人でもないっていうならなんでSEXしてるの?」
「あいつが無理やり…!…んぁっ…っっ」
しゃべろうとしてハイウィザードがつついていた琉風の乳首を押しつぶし、
声を出しそうになって慌てたように口を閉じた。
「えーそうなの?昨日モロクで君ら偵察してた人がさ、君の声聞いたらしいんだけど。
見た目とは想像も付かないようなエロい喘ぎ声出すから思わずヌきたくなったって言ってたよ?」
「やっ…」
話しながら琉風の乳首を人差し指と親指でつまみあげた。
「やだ…やだ…あんな奴嫌い…大嫌いだ…!」
「無理やりなのに、知らない人間がヌきたくなっちゃうくらいやらしい声出しちゃうの?
大嫌いな相手と何度もSEXしちゃうの?そっちのほうがよっぽどありえないんじゃないかなぁ」
「あっ!」
つまんだ乳首をきゅぅっと引っ張られ絶えられずに琉風が短い悲鳴を上げる。
「確かにいい声出すねぇ。ヌきたくなったのもちょっと分かる気がするかも」
「ひぁっ…くんっ…!」
ぎりぎりのところまで引っ張り上げて離すと琉風の身体がぴくんっっと震えた。
知られている。
他人に知られたくない、ましてや自分自身ですらなかったことにしたい出来事を。
1ヶ月前、琉風はジュノーフィールドで会った理というチェイサーに犯された。
2度と会うまいの思っていたのにたびたび理は琉風の前に姿を
現すようになり、その度に意にそぐわない行為を重ねた。
つい最近会ったのが昨日の夜。
モロク付近の砂漠の上で理に何をされていたのか、ここにいる人間は分かっているのだ。
『あぁっあっやだ…ひっひぅぅぅっ!』
『やだやだ言ってなんだよこの飲み込みかた。ほら根元までいっちまったぞ?』
『やめろ…抜けってば…やぁぁぁぁぁ!』
『抜いて欲しかったらはやくオレのことイかせるんだな。腰振って、オレのモノ締め上げればいい』
『やぁっやっヤァァァァッッ!!』
『琉風はおりこうだなぁ。早速言うとおりにしてるのか』
『違っしてな…っ…やっアアアアアアッッ』
『自分から腰振ってからみつくように締め上げてんのに違うって?』
『あぁっだめっやっやぁぁっあぁっあぁっんぁっあっあんっやぁっ!あぅぅぅッ!!!』
『やだやだ言いながらあんあん鳴きわめいて腰振って……ホントやらしー奴』
『だめっもうだめ…やぁぁぁっだめっあぁっあっアァァッやぁっアァァァァァァァッッッッ!!!!』
「………!」
あの声を聞かれていたのかと思うと羞恥で涙が出そうになる。
そして何より、
『無理やりなのに、やらしい声出しちゃうの?大嫌いな相手と何度もSEXしちゃうの?』
ハイウィザードの言ったこの言葉を否定できないことが悔しかった。
やめろと叫びながら何度も指と舌で快楽の絶頂に追い上げられた。
嫌だと泣きながら秘部に雄を突き入れられ歓喜の悲鳴を上げた。
忌むべきはずのあの行為に悦楽を感じた事実に、琉風は言い返す言葉を見つけられなかった。
「理にうちのギルドに来て欲しかったんだけどね。どーしても嫌だっていうの」
その言葉に横を向いていた琉風がハイウィザードに視線を向けた。
「唯一の肉親だっていうローグ捕まえたら考え直してくれるかなって思ったんだけど、
ネズミみたいにチョロチョロして全然捕まらないんだもん。
仕方ないから最近仲良しの君をターゲットにしたんだよ」
「そんなの…卑怯だろ…」
「んー?今何っていったの?」
ハイウィザードが琉風の言葉をわざとらしく聞き返してくる。
「人質とか卑怯だって言ったんだ!」
「卑怯?」
「うぐっ…!」
手にしていたロッドを琉風の喉に当ててぐいっと押し付けると琉風はうめき声を上げた。
「卑怯だなんて心外だなぁ。戦略って言ってよ……君がどんくさい男で
本当に良かった。これで問題なくコトが進みそうだし」
「…く…ぅっ……俺をこんな風にしたってあいつが動くわけないだろ…」
「そんなのやってみなきゃわかんないでしょ?」
ロッドを喉から離すとハイウィザードは立ち上がって離れていく。
代わりに、琉風に声をかけた騎士がこちらの方に近づいてきた。
だんっ!
騎士の足が琉風の上着を踏みつけた。最初に会った時とは別人のような卑しい目つきで腰の剣を抜く。
その切っ先が琉風のズボンにかかった。
ビッ…
剣を振り上げて琉風のズボンを裂いた。切った部分に刃を入れさらに大きく引き裂く。
「や…何して…やめっ…」
琉風の肌には一切傷つけずに、器用に騎士は琉風のズボンを裂いていく。
切れ端が落ちるたびに、琉風の肌が露になっていった。
「やめろっ…やだ…!」
剣の切っ先が中心付近に近づく。
「動くなよ。動いたら大事な部分まで切れちまうかもしれないぞ…?」
にやにやと笑いながらぐい…と剣に力を込めた。
「嫌だぁっ!」
ビィッ…!
一気に引き裂かれ琉風の下半身がむき出しにされる。
剣を腰におさめた騎士が、琉風の足に手をかけ大きく開かせた。
「やっ…やだ………!」
少し離れた所でプリーストとアサシンが笑いながら自分のことを見ているのが分かる。
「はずかしいカッコになっちゃったねー。いやらしい所丸見え」
「やだぁぁぁ!!」
ハイウィザードがロッドの先端で秘部をつつき琉風が首を振る。
「ココで理を飲み込んでるのかぁ…ねえ、理のはおいしい?」
「やだ…やめっ…嫌だっ…」
「どうしたの?さっきみたいにうるさいって噛み付いてこないの?」
「やぁぁぁぁぁぁ!!」
ぐりっと先端部分を挿入され琉風の上げる声を満足そうに聞いている。
「こういう攻められ方に弱いんだね君。これは楽しめそう」
ロッドの先が抜かれると、違うものが秘部に押し当てられた。
「やだっやだぁぁっやだっやだっやぁぁぁぁぁぁ!!!」
騎士の雄が琉風の秘部を無理やり押し開いて進入しようとしている。
「いいなぁその声。もっともっと聞かせてよ」
楽しくて楽しくて仕方ないというようなハイウィザードの笑い顔を見ながら、琉風の身体は激しい痛みに襲われた。
「ひっ…ひあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
騎士は力任せに締め付けてくる琉風に構わず一気に内部へと自らの雄を突き入れた。
苦痛に顔をゆがませている琉風にかまいもせずに騎士は腰を揺すりはじめる。
「抜いてっ抜いて…や…こんなの…や…抜い…て…っ…やぁっああああああああッッ!!」
少しも慣らさずにいきなり挿入された琉風の内部は裂け、出し入れするたびに
ぐじゅぐじゅと音を立てて結合部から血が溢れ床へと伝っていく。
快楽などあるはずもなく琉風の口から漏れるのは苦痛の悲鳴だけだった。
あまりの痛さでヒールをするために精神を集中することもできない。
「足もっと開かせろよ見えねえぞ?」
「んーこうか?」
アサシンに言われて騎士が椅子に座って眺めているプリーストとアサシンに
見せるように腰が浮くくらい琉風の足を高く持ち上げた。
「やだぁぁぁぁ!!」
「ほらもっと見せてやれよ」
琉風の足をさらに大きく左右にひらかせられる。
「やぁ…やだ…動かないでッ…うぅっ………」
嘗め回すような視線にただ首を弱々しく振って嫌がり続けることしか出来なかった。
「あーあ、血ぃ流しちゃって可愛そうに」
笑いながら言うプリーストのその言葉にはひとかけらの哀れみすらない。
「お陰で滑りよくなったぜ?この締め付け方たまんねぇ…」
「さっさと終わらせろよあとがつかえてんだからよ」
「そう急かすな…よっ…」
騎士が動きを再開すると引きかけた痛みがまた琉風を襲う。
「あぁっやぁっ動くなっ…あぁっ動いちゃっ…やぁっヤァァァァ!!!」
快楽を貪るためだけにどんどん騎士が動きを早めていくほど、琉風はただ苦痛が増していくだけだった。
「あくっうっうぅぅっやっやだっやだっやだぁっやっやぁっやぁぁっやァァァァァァッッッ!!!」
ドクッドクッ
男の精が勢いよく体内に流し込まれてくる。あまりのおぞましさに
琉風はその間ずっと激しく首を横に振り続けた。
「っ…………」
騎士が全て中に注いだあと、痛みで支配していたものがようやく琉風の体内から引き抜かれた。
琉風の秘部から血と精液の混ざり合った液体がどくどくと流れ出ていく。
ズキズキと続く痛みと体内に残る異物感。
「うぅっ…や…やだ…やだ…やぁ…やだよぉっ…」
未だ犯されているような感覚に拒絶の言葉をうわごとのように繰り返している琉風に、
遠巻きに眺めていたプリーストが近づいてきた。
「次俺ね。はいどいてどいて」
「おい急かすなって」
騎士を押しのけるようにしてそのプリーストが琉風の前に屈みこむ。
「なになに俺最後なわけ?」
「時間あるんだから慌てなくてもいいじゃない」
椅子の背もたれに顎を乗せて文句を言っているアサシンの隣に
ハイウィザードが腰掛けると、うっとりとした口調で呟く。
「思ったとおりだ。泣いてるライトグリーンのその目、すごく綺麗」
「も…やだ…やだ…」
「だめだよ。もっともっと君が泣かないと理はきっと素直になってくれないもの」
「だとよ。ヒールはしなくてもいいよな?どーせまた裂けちまうんだし」
プリーストが琉風の臀部を左右に広げ、痛々しいほど真っ赤になっている秘部を眺める。
「ヒクヒクしてんなぁ。本当は早くブチこまれたくてウズウズしてんじゃないのか?」
「やだ…違う違うっ…!」
気持ち悪い。
注がれる視線も残ったままの異物感も。
今身体に触れている男の体温も。
全部全部気持ち悪い。
比べたくなんかないけど。
今もすごく大嫌いだけど。
頭にくるくらい気持ちいいことしかしなかった
『アイツ』の方がずっとましだ。
「くっ……っ………」
琉風は目を閉じて一度ゆっくりと深呼吸をした。
それから静かに目を開き後ろ手に縛られた両腕で唯一自由な指を動かし、
その身体に自由が戻り始めていることを確かめる。
「あんた…かたそうだな」
琉風のその言葉を聞いたプリーストはニヤニヤしながら上に重なってくる。
「硬いだけじゃなくでかくて太いんだぜ?これから存分に確かめさせてやるよ。お前のここでな」
琉風の生々しく血の跡の残る秘部に自分の雄を押しつけた。
「そんなのもう…いらない」
「満腹宣言はまだ早いだろう?これからもっと……」
そこではじめてプリーストは琉風の周辺に浮かぶ青白い小さな光の玉・気弾の存在に気づいた。
「お前っ…ぐぅっ!」
琉風は両足でプリーストの胸を蹴り飛ばした。
無防備状態でまともに蹴りをくらったせいか壁の方まで飛ばされる。
よろめいているその身体を壁に押さえるけるように琉風が後ろ向きに密着した。
手のひらがプリーストの腹部に当たる。
『発勁!!』
「ぐぇっ」
カエルのような声を上げてビクンと身体を震わせ、その頭が琉風の肩にもたれてくる。
琉風がプリーストから静かに離れるとそのまま床に崩れ落ちそのまま倒れた。
「ッチ…」
その様を見て一番先に行動を起こしたのはアサシンだった。
ヒュンと空を切る音がして琉風は横に退いてアサシンのカタールを避け、
追撃で向かってくるそのアサシンに対し今度は逃げずに琉風はくるりと背中を向けた。
ドッ…
鈍い音がしてカタールが琉風の腕に食い込む。
確かな手ごたえがあったにも関わらずアサシンは舌打ちして後方に引いた。
腕を拘束している縄ごと攻撃させることで傷と引き換えに切れたロープを地面に落とす。
その間に琉風の周りに気弾が一つ、二つと増えていく。
『爆裂波動!!』
琉風の全身が紅の稲妻に似たオーラに包まれた。
「いけない、下がって!」
ハイウィザードが叫んだ時には琉風はすぐアサシンの目の前に間合いをつめていた。
『阿修羅覇凰拳!!』
建物全体を揺るがすような衝撃音と共にアサシンの身体が琉風の拳と共に床にたたき付けられ、動かなくなった。
「薬の効果は3時間だって言ってたろ。まだ1時間たってないのになんであんな動けるんだよ」
自分の上着で下半身を隠すように腰に巻きつけている琉風を
見ながらハイウィザードに向かって騎士が囁く。
「いいねえあぁいう闘い方。君も見習った方がいいんじゃない?」
「この状況で何暢気なこと言ってんだよ」
「この状況だからこそ。だよ」
味方二人が倒されたというのにハイウィザードの表情は余裕に満ちている。
「まぁあんなにすぐに動けるようになったのはちょっと誤算だったけど。これくらいだったらどうとでもなるよ」
「阿修羅撃たれたらどうする。さすがにあれを食らったらお前ももちろん俺だって立っていられるか」
「今のあの子は精神力が低下して阿修羅覇凰拳どころか通常の技すら出せないよ」
「…本当か?」
「勉強不足だねー君は。まぁ…教授のソウルチェンジで精神力を分け与えてあげたり、
精神力を回復してくれる薬を飲めば使えるようにはなるけど、あの子の持ってる
アイテムは全部取り上げちゃったし、ここに教授はいない。拳で殴ることしかできないモンクの相手なんて
君だけで十分すぎるだろ?一人でここまで相手に出来たのなら上出来。って所かな?」
「………………」
何も答えずに沈黙している騎士に対しハイウィザードは話を続ける。
「理もペットの躾がなってないねぇ。あの二人は僕が起こしてあげるから、
三人でちゃんと教育してあげて。さっきみたいにうんと泣かせて叫ばせてよ…ふふふ…」
懐からイグドラシルの葉を取り出して先ほどの光景を思い出したのかクスクスと笑っている。
「おい、阿修羅撃てないってんならあれは何なんだよ」
騎士が指差す先には二度目の爆裂波動をまとった琉風の姿があった。
ハイウィザードの顔から笑みが消えた。
ドサッ。
既に倒れていた騎士に折り重なるようにしてハイウィザードが倒れる。
「はぁっ…」
全員が完全に意識がないのを確認してようやく琉風は安堵に似た吐息をついてその場に跪いた。
「阿修羅…撃ちすぎた…さすがにキツ…」
それから手首につけていた数珠をそっと眉間に当てた。
アサシン、騎士、そしてハイウィザード。琉風は短い時間に3度の阿修羅覇凰拳を放っている。
一度使えば精神力が極度に低下し、短い時間に何度も放つことは出来ない阿修羅覇凰拳を連続で
使えた理由は琉風が手首につけている数珠にあった。
カピトーリナ寺院を出るときに寺院を治める長老が、精神力を回復してくれる
青ハーブで作った丸薬を数珠の中に仕込んでくれていたのだ。
「ごめん長老…全部…使っちゃった…」
そう呟いて、早くこの場を離れなければと思いつつも、そのまま倒れて瞳を閉じてしまった。
どのくらいの時間がたっただろうか。誰かが琉風の頬に触れてきた。
「ん…」
その触れ方があまりにも心地よくて琉風は思わずその手に頬擦りをしていた。
何度か優しく撫でたあと、その手は離れていく。
靴音が遠ざかる音がしてやっと琉風は重たい瞳を開けた。
目に入ったのは見覚えのある背中。
「……!」
琉風の見間違いではなくその人物は理だった。
理はすぐそばに倒れているハイウィザードの所にかがみこんでじっと様子を伺っている。
やがてハイウィザードがわずかにうめき声を上げたのを聞くと、腰の短剣を引き抜いた。
くるりと短剣を片手で回すと、その刃先をハイウィザードの背中に向かってつき立てようとした。
『白刃取り!!』
起き上がった琉風がつき立てようとした理の短剣を両手で受け止めた。
理は眉ひとつ動かさない無表情でその手にさらに力を込めた。
理は片手。琉風は両手で受け止めているにもかかわらずじわじわと
短剣はハイウィザードの背中に近づいていく。
「…何…してるんだよっ…」
「こいつら全員殺す」
淡々とした口調で史の言葉を吐く理に今までにない恐怖を琉風は覚える。
「や…めろよ……なんで殺す必要があるんだよ!」
「お前も人かばってるヒマがあったらオレの首狙えっての」
力がやっと緩みその反動で琉風がぱっと手を離した。
「何でお前がこんな目に遭ったのか・分かってるんだろ?」
「…知ってる」
「オレにレイプされた上にこいつらに拉致されて。それでも『自分の力不足だった』
『相手を責めない』だなんて綺麗事並べる気か?」
「…俺がもっと強かったらこんな風になんてなってなかった!」
琉風のその言葉を聞いた理の瞳が今までに見たことのない程に鋭くなる。
「あ…!」
理が自分の心臓に短剣を向けてその柄を琉風に握らせた。
「殺せ」
「…何言ってんだよあんた…!」
「手ぇ離すなよ。離せば倒れてるあいつらをオレが全員殺す」
それを聞いた琉風は離そうとした柄を握りなおすしかなかった。
「オレが本気でやったら太刀打ち出来ないことくらいよく分かってるよな?」
少しでも動けばその刃が理を傷つけそうで、柄を手にしたまま琉風は動くことができない。
「お前の刺す刃は逃げないで受けてやる。転がってる人間を
殺したくないっていうんならオレを殺して止めろ」
本気だ。
本気でそうするつもりだ。
ビリビリと肌に伝わってくるもの。
これは『殺気』
この心臓に刃を立てなかったら、倒れている人間全員が死ぬ。
「ほらさっさと刺せ」
「嫌だ…刺さない…絶対嫌だ!!」
柄を握り締めたまま琉風が叫ぶ。
「あいつらの死体を見るのを望むんだな」
「違う!」
理が琉風から短剣を奪い返そうとした時、琉風は刃の部分を握ってそれを止めた。
握った指の間からぼたぼたと血が伝い腕へと流れていく。
「離せ。指切り落とすぞ」
今まで聞いたことも無い、ぞっとするような低い声。それでも琉風は刃から手を離さなかった。
「違う…そうじゃない…俺は…あんたを殺したくない死んでも欲しくない!」
刃から引き離そうとして琉風の手を握った理が動きを止める。
「嬉しかった…」
ささやくような小さな声。
「絶対来るわけないって思ってた。でもあんたの姿見たとき大嫌いなのに…すごく嬉しくなったんだ…」
「…………」
しばらくすると理が舌打ちをして琉風の手を掴むと刃から強引に離させる。
「やめ…!」
短剣の行った先は琉風が慌てて庇ったハイウィザードの背中ではなくて、理の腰の鞘の中だった。
「ったく・どこまでおめでたい頭してんだよお前は」
琉風が安堵するのもつかの間、理が琉風の身体を自分の肩に担ぎ上げた。
「な…おろせっおろせよ!!」
「うっせ」
暴れる琉風の動きを封じて歩き出した。
「…………!」
階段を登り、ドアを開けるとむせるような煙のにおいに琉風は口元を手の甲で覆った。
煙に覆われた街。
自分が連れてこられた場所が鋼鉄の都市アインブロックだと言う事を知った。
理がその煙の中を迷うことなく琉風を肩に抱えたままで歩いていく。
歩いていくそのその先に「HOTEL」と書かれた看板の建物があることに琉風が気づく。
「待てよ!どこ連れて行く気だよ!!」
「あの看板読めねえほど阿呆なのか?」
「読める馬鹿!!なんでそんなとこ行くんだよ!」
「安心しろ。料金なら俺が払ってやる。ちゃんと『二人分』な」
理の目的を察してさらに足をばたつかせて抵抗した。
「離せよ!離せってば!」
「せっかくオレから逃れられるチャンスを棒に振ってオレを殺さなかったお前が悪い」
肩の上で暴れる琉風を両腕で降りられないようにがっちりと押さえ込み、
ホテルの入り口の扉を蹴り飛ばして開いた。
「いらっしゃいって。うっわぁー……リィかよ」
フロントにいた従業員は理の顔を見たとたんに見るからに嫌そうな顔をする。
「客相手にうっわー呼ばわりか」
「お前の場合はは客じゃなくて害虫だろ。連れ込み宿でも行けっての」
会話のやりとりからするとどうやら理の知り合いらしい。
「はーなーせーっっ!!離せって言ってるだろ!!」
「それがねぇからここに来たんだよ。部屋のカギよこせ」
理は耳元で叫ぶ琉風の言葉などまるで聞こえてないかのように会話を続けている。
「犯罪の片棒担ぐのはごめんだよ?肩にのっかってる子。むちゃくちゃ嫌がってるじゃん」
「極度の照れ屋なだけだ・気にすんな」
「違う!!離せ馬鹿野郎ッッ!!」
顔を真っ赤にして琉風が理の背中を殴る。
「ってことらしいですよ。お引取りを『お客様』。お帰りはあちらでございます」
従業員はにっこりと取ってつけたような笑顔で入り口の方に手をやった。
「…………」
理は無言でズボンのポケットから1枚のカードを取り出し表を伏せた状態でフロントデスクの上に置いた。
従業員はそのカードを指で引き寄せ表面を見る。すると怪訝そうだったその顔がみるみる含み笑いに変わった。
「カギ」
「はいはい、2階の奥の部屋ね」
さっきとは打って変わったにこやかな態度で差し出した理の手のひらにルームキーをのせた。
「部屋に誰も近づけさせんなよ」
「分かった分かった。ごゆっくり〜」
琉風を抱えたまま階段に向かって歩いていく理に対し、愛想よく手まで振っている。
「はっ…離せよ!離せばかっ!!」
「悔しかったらお前も殺したくないとか俺が強ければとか喚いてないで
こういう取引ソツなくこなせる世渡り上手になるんだな」
「離せ…離せって…ぁっ!」
琉風がようやく離してもらえたのは部屋のベッドの上だった。
起き上がって即座に動こうとした琉風の動きが止まる。
理は目の前にただ立っているだけだったが、まったくスキを感じさせない。
きっと琉風がどう動いてもすぐに捕まえられて押さえつけられてしまうだろう。
琉風がどう逃げ出すか考えいると理が口を開いた。
「治せ」
「…?」
「傷治せっつってんだよ」
「こんなのたいした傷じゃない」
手の傷を軽く押さえて琉風が答える。
「そっちじゃねえよ」
「他にケガなんてしてな…」
「ケツ穴に無理やりブチ込まれて裂けたのは怪我って言わねえのか?」
「!!」
確かに裸に近い状態ではあったが上着で隠していたはずだし何より理があの場所に
来たのはその場にいた全員を地面に這い蹲らせたあとの筈である。
「なんでそんなこと知ってんだよとかめっちゃ顔に出てるぞ。ほんとお前って分かりやすい奴だな」
ベッドに腰掛けると琉風が腰に巻きつけていた上着をめくりあげた。
「なにすっ!やめろってば!」
「裸同然のカッコ。足の間に血の痕。どうせあの場所にいた奴ら全員に
代わる代わるろくに慣らしもしねぇでブチ込まれたんだろ」
「代わる代わるになんてされてない!2人目が入れる前に全員倒したんだから!」
「へーぇ?んじゃ1人に入れられたってのは認める訳か」
「……………ッ!!」
自ら墓穴を掘ってしまった恥ずかしさで手を自分の口に当てながら琉風は
上着をめくっている理の手を蹴飛ばしてベッドのすみに逃げた。
「いいからとっとと治せ」
「俺が俺の怪我をいつ治したっていいだろ。指図するなよ!」
「お前のこと思って優しい言葉かけてやってんのに指図するなと来たもんだ」
「それとこれとは別だろ!」
「あーあーあー。さっき嬉しかったとか言ってたくせに何だ・その態度の差」
「あっ…!」
自分を蹴飛ばした琉風の足首を掴んで片腕で軽々と自分の所に引き寄せた。
「やめろってば何すんだよっ!」
「お前な…この状況で何スんだとか相変わらず大胆なこと聞く奴だな」
抵抗を巧みにかわしてあっさりと琉風の上にのしかかる。
「うるさい答えろよ!」
「洗うんだよ。お前の中」
巻きつけられたままの琉風の上着の中に理の手が入り込む。
「んっ…やッ…!」
迷うことなく指が先ほどまで道具のように扱われていた秘部に到達した。
触れられただけで痛みが走る。
「やだ…触んな…っ」
せめてその手を遠ざけようと理の手を掴んだ。
手が震えるくらい力を入れているにもかかわらず理の手は離れる気配がない。
指先で入り口をくすぐるように撫でられると、痛みの他にじわりと琉風の中に広がる妙な感覚。
それに気づかない振りをして抵抗を続けた。
「やだ…触るな…触るなってば…!」
「お前の中に残ったソイツのモノ綺麗に洗い流してやるよ。オレのでな」
「!!」
「ソイツのが全部流れるまで何度もお前の中に流し込んでやるよ。そうだなぁ…朝までかかるかも…な?」
要するに朝まで好き勝手扱うと言っているのだ。
「苦痛を感じたくなかったらとっととヒールして治すんだな」
「治さない…」
琉風の言葉に秘部に当てていた指の力が少しだけ強まる。
「んっ…!」
痛みに顔をゆがめた琉風の顔にほんの少しの動けばキスできるくらい間近に理が顔を近づけた。
「裂けた所にブチ込んで気絶するまで犯されたいのか?」
「やりたいならやれよ!あいつらみたいに笑って見下して好きに扱えばいい!」
今の自分ではどんなに抗ってもきっと理には勝てない。
それでもここでヒールをしてしまえば理を受け入れることを許してしまうような気がした。
琉風の意地であり、抵抗だった。
「…………治す気なしか」
指が離れ腰に巻きついている琉風の上着を剥ぎ取り無理やり
全裸にさせると、琉風の身体にベッドに押さえつけた。
これから来るであろう痛みに絶えるために目を閉じて歯を食いしばる。
だが琉風が感じたのは痛みなどではなかった。
「………?」
おそるおそる目を開くと、自分の身体が緑色の淡い光に包まれていた。
いつのまにか琉風の胸に数枚の見たことのない何かの文字が書かれた
紙がおかれており、光はその紙から発せられているらしかった。
この世界には魔法を封じ込めた不思議な紙、スクロールの存在を
聞いたことがあったがこれがそうなのだろうか。
そしてこのスクロールが放っている魔法は。
「ヒール…」
スクロールが消えると琉風を取り巻いていた緑色の光も消える。
琉風の身体から痛みが消え、傷が癒えているのがわかった。
「3枚で間に合ったか」
「なんであんた…」
残りの手にしていたスクロールをしまい込んだ理に起き上がって問いかける。
「痛いままヤれとかお前ドMか?そういうプレイしたいなら他の奴とスるんだな。
生憎オレはそーゆー趣味じゃねんだよ」
「う…うぅ…っ」
それを聞いた琉風が突然ぼろぼろと涙をこぼして泣きはじめた。
「なに・泣くほど痛いことサれたかった訳?」
「違うバカっ…う…ぅっ…」
止めようにも止まらないという様子で手の甲で溢れる涙を必死にぬぐっている。
「…ガキが」
呆れたような口調で理が琉風の頭に手を乗せて髪を梳くようにひと撫で
してやると、琉風の涙はますます止まらなくなった。
「絶対そのまま『やなこと』されると思ったのに…なんでヒールなんか…ひっ…うぅっ…」
理は何も答えずに琉風の髪を指で梳いている。
「初めてリヒタルゼンのホテルで『やなこと』されてからずっとあんたが嫌いだった…いつか絶対
あんたより強くなってその余裕かました顔面に阿修羅食らわせてやるって…
思ってたのにっ…来ないと思ってたのに来てくれたりとかヒールしたりとか…
なんでそんないきなり優しい所見せるんだよ!大嫌いでいられなくなるだろ!!!!」
頭を撫でていた理の手が琉風の涙を拭いその頬をそっと撫でる。
それは半分意識を失いかけていた時に琉風の頬を撫でてくれた手の感触と全く同じだった。
「これ以上優しくすんなっ…嫌いだっ嫌いっあんたなんか嫌い…!」
理の両手が琉風の背中に回る。そのまま抱き寄せられた。
「大嫌いだって…大嫌いだって言ってるだろバカっ…!」
すっぽり胸に収まった琉風の身体を包み込むように抱きすくめる。
「琉風」
「うぅ…うっ…ひっく…うぅ……………!」
名前を呼んだ理の声が合図だったかのように琉風は理の胸に顔を埋めて泣きじゃくった。
最初の時のように笑ってまた裏切られるかもしれない。
理が今まで自分にしてきた事を許した訳でもない。
それでもすがらずにはいられなかった。
様々な感情を吐き出すように泣き続ける琉風の髪の毛に唇を寄せ、理はただ黙って抱きしめた。
「今日は…逃げても追わないでやる」
琉風が泣き止んだころ、理がようやく口を開いた。
「このまま部屋に残ったら…言わなくても分かるよな」
「……」
理の言葉をその胸に顔を埋めたまま黙って琉風は聞いていた。
「5秒時間やる。決めろ」
琉風は理の腕から逃げなかった。
* * *
ベッドの上には剥ぎ取られた琉風の上着に重なるように理の服が散っていた。
既に全裸になっている琉風の身体を覆うように理が肌を重ねてくる。
何度も行為は繰り返してきたが、理がこんな風に裸になることはなかったため、
直接触れる肌の感触と、いつもと違って優しく触れてくる理の指に戸惑う。
「んっ…」
唇が近づいてきて初めて琉風は拒まずにそれを受け止めた。
ちゅ、ちゅ。と軽く啄ばんだあと琉風の頭の後ろに手を回して深く合わせる。
「んぅぅっ…」
かすかに残る煙草の香りを感じながら自分の舌に絡まってくる理の舌をこわごわと受け止めた。
「ん…ふ…ぅ…ん」
指先が琉風の乳首をいじるたびに塞がれた唇のわずかな隙間から声を漏らした。
「ふ…ぁ…あ…」
唇が離れると理の舌が唇、顎、首へとつぅっっとなぞるように降りていく。
「あっ!」
理の指がいきなり秘部に当てられた。
ヒールスクロールで傷が癒えているため痛みはなかったが、先ほどの乱暴な挿入を思い出して縮こまる。
「はぁ…はぁ…あっ…」
それでも指の腹で入り口を何度も擦り付けられると恐怖ではない感覚を思い出していく。
否定しながらも、心のどこかで悦んでいたあの感覚。
「んっんっ…ぁ…」
乳首を舌先で弄びながら琉風の声色に快楽を帯びてきたころに指を中へともぐりこませると、
ぐぷ。と音を立てて中に残っていた精をかき出していく。
「はぁっ…はぁっ…んっ…ぁ…」
指を抜き差ししながら中心を舌でぺろりと舐められる。
「優しいだけじゃ物足りなくなってきたか?」
「う…ふぅ…」
「腰・物欲しそうに動いてるぞ」
「あぅっ」
根元から先端にかけて舌先で舐めあげられる。
「あっあぁっあ…あ…ぅ…」
「その前に、オレに言いたいことあるんじゃねえか?」
「……ぅっ…」
理はただ触れる程度に軽く舐めるだけ。
わざとに焦らしているのだ。琉風の求める声を聞くために。
今まで抵抗してそれを拒み、逃げ場のない所まで追い詰められて泣きながら言わされていた言葉。
「もっと…もっと…厭らしいこといっぱいしてっ…!」
自分でも少し驚くくらいためらうことなく口に出す。
罪悪感いっぱいにしながら受け入れていた『それ』が、今は欲しくて欲しくてたまらなかった。
同時に琉風のものが理にくわえこまれた。
「あうぅぅぅぅ…!」
指が知らないうちに2本に増やされ乱暴にかき回されている。
それでも、最初の恐怖は嘘のように消え、ただただ湧き上がるのは強い快感。
心の片隅で浅ましい。と思いながら、もうその感情を止める術を琉風は見つけられなかった。
「あっあっだめ…だめっだめっ……やぁ………!!」
されるがままに大人しくしていた琉風が突然腰を引いて逃げようとした。
理はそれを止めることもなく、あっさりと張り詰めた琉風のものを口から離して指も埋め込まれたまま動きを止めてしまう。
「琉風。『ダメ』じゃなくて『イク』んだろ?」
唇についた先走りを舌で舐めながら、目を潤ませてこちらの方を見ている琉風に問いかける。
琉風はその目から恥ずかしそうに目を逸らすだけで何も言わない。
「『イク』って言ってみろ」
うっすらと桜色だった琉風の顔が一気に紅に染まる。
「やっ…そんなの言えな…あぁッ」
琉風の唇に指を当ててゆっくりとなぞるとその指の動きだけで琉風の声が快楽に震える。
「ア…ア…んっ…」
「琉風」
唇に当てられた理の指をぺろぺろと舐めている琉風の名前を呼ぶ。
「う…ァ…い…イ…ク………ひあぁぁっ!!」
指を更に増やされ3本の指が内部で動き出す。
「そのまま続けろ」
「あぁぁッ…イクっ…イクっんぁぁっイク…あぁぁぁっあぁっんぁぁっあぁぁんっっ!!」
指を抜き差しされながら喘ぎ混じりに琉風は言い続けた。
「イクっイクぅッあぁぁっやぁっ…いっいあぁぁっやぁっあっあっアァァァァッッ!!」
放っていた中心に理は口を寄せ先走りをじゅるじゅると
音を立ててすすり、根元まで口に含んでは舐めしゃぶる。
ぐちゅっじゅぷじゅぷっぐちゅぐちゅぐちゃぁっ
付け根まで入れられた指はこねくり回すように動き、粘着質な音を立て続ける。
同時に攻められる強い快感にただ琉風は翻弄された。
「アァッイクっイクッあぁぁっあっも…やァっ…アァッイクッやぁっあっイクッ………………
あっあぁっ!あぁんっっ!アアアアアアアアアーーーーッッッ!!!!」
腰を押し付けるようにして琉風は理の口の中に吐き出した。
琉風を絶頂の波に酔わせるように理は指で内部をゆっくりと動かし続け琉風の放ったものを飲み干す。
「アァァッ…はぁっはぁ…はぁ…ぁ…んぁ…」
ずるりと指を引き抜くとぐったりとして喘いでいる琉風の背中に腕を回し、
その身体を抱え上げて胡坐をかいた上に琉風を後ろ向きに座らせた。
「うぅっあッ」
熱い理の雄が秘部に押し当てられ琉風が思わず腰を浮かした。
「そのまま腰下ろせ」
「…………ッ」
「いやらしいコト。いっぱいシてほしいんだろ?」
「あ…ぅ…っ」
理の首に手を回しながら腰をためらいがちに腰を下ろしていった。
「う…んぁ…っ」
ずぶずぶと自分の中に理が入っていくのが分かる。
心臓側の乳首を指先で弄んでいた理が、琉風の両足をひょいと抱え上げられ、
その拍子に半分ほどまで挿入されていた理の雄が一気に内部に突き入れられる。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
「…お前が焦らすからだよ」
琉風の足を抱えたまま理が動き出す。
「あっあぁっんぁっあっあぁんッ」
下から突き上げられるたびに理の首に腕を回す琉風の身体が跳ねる。
「あっあぅっあっあぁんっあっあぁぁっあぁっあぁぁっっ」
ふと理の動きが緩まり、雄で内部を探り出した。
「ココだよな」
「あうぅぅぅぅっ!」
理が雄を押し付けたある部分を突くと琉風の声が一際高くなった。
「ココ激しく突かれるの。琉風スキだよな」
「や…そこだめ…そこ…あぁぁぁぁッッ!」
ゆっくりと突くだけでも琉風にとっては強すぎるらしく、身体をふるふると震わせている。
「違…好きじゃない…あっ駄目っ…変になる…『ソレ』されたら変になる…やはァァァッッ!!」
「もっと見せろ・変になったとこ」
「アァッアっ………アぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!」
琉風自身も信じられないくらい鼻にかかった高い声を上げていた。
「あっあっあぁっんぁっひっひぃんっひぁっやっアァッあぁっんぁっんあぁぁぁッッ!」
あの時騎士に強要された行為と同じことをされているはずなのに今は気持ちよさしかなかった。
「あ…あぁっ…い…いぃっ気持ちいい…あっあぅっふぁ…あぁんっあぁぁっ…んっ…んぅぅっ」
「気持ちイイのか?」
とろんとした顔で行為に溺れている琉風を理が自分の方に向けさせ琉風の唇を舐めた。
「き…きもちいいっ…きもちいぃっ…んっんぅっ」
普段では絶対言わないであろう言葉を紡ぐその唇に押し付けるようなキスをする。
「は…ふ…ふぅ…んっんぅ…」
唾液の糸を引きながら琉風の理の唇が離れていくと、そのまま琉風の身体をうつ伏せに倒した。
琉風の顔がベッドにおしつけられると、代わりに腰を高く突き出すような格好にさせられる。
「ああああああああッッッ!!!」
うなじを甘く噛み付かれ、これ以上ないほど奥を突かれた。
「あぁっ奥にっ…あっあぁっや…あぁっ…深い…あぁっなかにっ………!」
「…は…っ…」
うなじから口を離された時、喘ぐような理の吐息が聞こえた。
それを聞いた瞬間身体がじわり。と熱くなる。
「オレが喘いでんの聞いて興奮シたのか?」
確信をつかれるようなことを耳元で囁かれ小さく首を振りながらシーツに顔を埋めた。
「…琉風のスケベ」
そんな琉風の腕を引いてシーツから顔を離させる。
「んぁっ…あぁっんぁぁぁぁぁッッッッ!!!!」
琉風の弱いところに打ちつけるように理の雄が容赦なく突き刺さってくる。
乱暴にされているはずなのに琉風は感じていた。
ありとあらゆる感情を支配するような強すぎる快感に、ぽろぽろと涙が頬を伝っていく。
その涙を舌で拭う優しさとは裏腹に、琉風の中を壊してしまうのではないかという勢いで理が腰を打ち付ける。
「あぁっあんっっ気持ちいいっ気持ちいいよぉっあぁっイクっイクっあぁっイクっ
あぁ気持ちいいっいいっあぁっイクっ…アァッアァァァァァァ……!!!!」
* * *
「うひゃっ」
目を覚ました琉風は開口一番そんな悲鳴とも何ともつかない声を出していた。
間近に理の顔があったからだ。
その二の腕は琉風の身体を包むように巻きついており、どうやら抱きしめられたままで眠っていたらしい。
ちらりと部屋の窓を見ると、太陽が高い位置にあるのが分かった。
「昼…にはなってないか」
しばらく静かに理の様子を伺っていると、静かに規則正しい寝息が聞こえてくる。
数分くらい黙って観察していたが、ようやく眠っていると納得して、
理の腕を自分の身体からどけむくりと起き上がった。
「?」
起き上がった拍子に、理の胸の部分に紅くひっかいたようなあとが残っているのに気づく。
恐らく自分がつけたものだろう。
その爪のあとをつけた状況を思い出す。
「…………!」
見なくても分かる。きっと耳まで真っ赤だ。
慌てたようにその部分にヒールをかけてその紅い痕を消し、理が眠っていたこと
にほっとしながら布団から出てベッドに投げられた筈の自分の服を探した。
「あれ…?」
ベッドの隅に無造作に投げられている理の服の隣に、きちんとたたまれて置かれているモンクの服と、
奪われた筈の自分の装備品と所持品に気づく。
手にとって見ると真新しいモンクの服で、破かれたはずのズボンも一緒に用意されており
代わりに腰に巻きつけていた血で汚れた上着がどこを探しても見つからない。
全て理が用意してくれたものだろうか?
尋ねてみたい気持ちはあったが起こすとまた面倒なことになりかねないと素直に袖を通すことにした。
服を身に着けたあと、もう一度理の様子を見てみるが、やはり眠っているのか寝息だけが聞こえてくる。
顔を近づけても相変わらず起きる様子がない。
ちゅ。
唇で唇に触れる。
「……嫌いだ」
小さな声で一言呟いて静かに部屋を出て行った。
足音が遠ざかって何も聞こえなくなった頃、理がゆっくりと目を開く。
琉風が触れた唇を軽く舌でなぞって呟いた。
「オレも…嫌いだ」